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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あの時の君は何故か笑顔だった。

作者: だいどぅ

私はとある喫茶店で友達を待っていた。

というのも先日、手紙で信じ難い事を言われてしまったから友達を呼び出した。

言われた事、それは『お前の一番親密な人を殺さなければ家族もろともお前を殺す』

というものだった。

今持っている鞄の中には包丁が入っている。

この鈍器で殺さなければならない。殺したくないのに。

そんな感情が自分を支配していくのが分かる。

深呼吸をして注文したカフェラテを飲むと大きい溜め息をついた。


数十分もするとだいどぅが来てしまった。

ここにいると言う様に手を振る。

それに気が付き彼女がこっちに向かってきた。


彼女が席に着くと疲れている様子が伺える。

「ちょっと休憩したら行きたい場所があるから付いてきてもらえる?」

と聞いた。いいよと言う返事が返ってくる。

だいどぅが水を飲み、軽く伸びをすると「休憩できたし行こうか」と言った。

正直、行きたくなかったが行くしかない。

本音を飲み込み、うんと返事をした。


すぐに会計を済ませ外に出る。

何処へ行こうと考えながら歩くと

丁度良さそうな裏路地を見つけた。

ここでやろうと裏路地へ入っていく。


人に見つからない様に奥の方へ進む。

行き止まりに近い場所まで来ると足を止めて鞄から包丁を取り出した。

包丁を見られない様に隠しながらだいどぅの方を向く。


「だいちゃん、ごめんね」

言い終えると同時に一歩だいどぅに近付き腹に包丁を刺した。

遂に抑えきれなくなり泣いてしまった。

だ「どうしたの?」と言う声が聞こえたが答えられなかった。


突然、えっ?と聞こえる。

彼女も気付いてしまった。ヤバイと思い包丁を抜く。

彼女が苦しそうな声をあげてその場に蹲る。

呼吸数が増え、吐血しているのが見える。

罪悪感でいっぱいになり、しゃがみ込んで号泣した。


突然、だいどぅに抱き締められる。

まさか抱き締められるとは思ってもいなかった。

確実に殺らなきゃ。何故かそう思った。

ギュッと包丁を握る。

彼女の首元に包丁を当てようとした時だった。


「今までありがとう」

彼女への思いが込み上げてくる。

手を止めようとした時にはもう遅く、首を掻っ切ってしまった。


包丁を落とし抑える事の出来ない涙を必死に両手で拭う。

彼女の手が自分の頬に当たり少しだが涙を拭ってくれた。

死にそうなのに…なんで笑顔でいられるの?

そう、思ってしまった。


だいどぅの腕が落ちる。

彼女が、目を瞑ってしまった。もう起きない。

自分がやった事なのに、分かっている事なのにと

自分を責め立てた。


動かないだいどぅを見つめる。

不意に、ビルの屋上へと行きたくなった。


普段は入れないビルの屋上へと入る。

風が気持ちいいと感じた。

屋上の端に立つと身を投げ出した。


空を見ながら落ちていく。

記憶がフラッシュバッグする。

これが走馬灯というものかと関心すると

目を瞑った。バキッと鈍いと共に痛みがやってくる。

その痛みも数秒だけで、もう何も感じなくなった。


地面に叩きつけられる瞬間、「だいちゃん待ってて。私もそっちに行くから」

と呟いてみた。

彼女は迎えにいてくれるかな?もしかしたら怒っているかも

等と考え事をすると急にフッと意識が途切れた。


『バーカ。なんで来た』

背後から声がする。後ろを振り向くと彼女がいた。

怒られてしまったがえへへと笑う。

また来世で会おうと言うと二人で輪廻の輪へ歩いて行った。

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