マンドレイク?
「あの~、さっきはすみません。助かりました」
マイコに会わせるため、麦わら帽子の女性に近づき、声を掛けた。
近くで見ると結構俺好みの顔をしている。
胸も程よい大きさで、黒いシャツの胸元が健康的でセクシーだ。
「いいよいいよ。それよりやっと会話してくれたね? 私は新川里香って言うの、よろしく」
「あっどうも、宮川優樹です。よろしく」
いきなり握手を求められ、驚いた。かなりフレンドリーなタイプのようだ。
手を握ると、新川さんの手は柔らかく、久しぶりの女性の手に、ドキッとした。
「あの、そっ、それでですね。あの~……ちょっと来てもらえますか?」
挨拶も早々に、用件を伝え、同行を求めた。しかしなんと説明したらよいか分からず、とにかく来てもらった方が早いと思い、新川さんをマイコの元へ案内する事にした。
そんな突然の要求にも、新川さんは何も言わず頷き、黙って付いて来てくれた。だが、テントの脇まで来ると足を止め、驚く質問をする。
「いきなり私が行ったら、叫ばない?」
その言葉に、本当に彼女はマインドレイクを育てた事があるようだと悟った。
言葉の意味を理解した俺は、先にマイコに近づき、合図を送ったら新川さんが顔を見せるよう言った。
そして一人マイコの元に行くと、完全に畝に潜り擬態を続けるマイコに声を掛けた。
「マイコ。今から新川さんて言う人が来るから、驚いて叫んだりしたら駄目だぞ?」
声を掛けるとマイコは目から上を出した。そして分かったと、うんうんと畝が崩れるほど頷き、新川さんのいる方ばかり見ていた。
これなら大丈夫だと確信した俺は。新川さんと目を合わせ、来てくれと頷いた。
新川さんもそれに頷き、マイコを脅かさないようゆっくりと近づき、テントの陰から恐る恐る覗いた。
すると、その姿を目にした瞬間、マイコは驚いたようにズボッと頭まで潜り、ゆっくりと頭の半分を出した。
「初めまして。私は里香、よろしくね。えっと……この子の名前はなんて言うの?」
挨拶されたマイコは、眉毛がクイっと跳ね、隠れるようにそーっと目元まで潜った。
「マイコです」
「マイコ? 女の子なの?」
女の子なの? マインドレイクには男の子もいるのだろうか?
「ええ。そうです」
それを聞いた新川さんは目を丸くし、嬉しそうに笑う。そして突然俺を押しのけるように横に屈み込み、人差し指を出しマイコに挨拶した。
「よろしくマイコちゃん。顔見せて?」
優しく語り掛けるが、意外と強い力で押されベストポジションを奪われた事に驚き、もしかしたら凶暴な人なのかと思った。しかし悪い人ではないはずだ。
指を差し出されたマイコは、じっと見つめたあと、突然飛び出し、爆弾を一瞬触るように差し出された指に触れ、再び頭まで潜り、ゆっくり確認するように目元まで顔を出した。
「可愛いね! 私が育てた子は男の子だったから、君が羨ましいよ!」
やはりマインドレイクには性別があるようで、そうなのかと勉強になったが、羨ましがる前に、危うくほかの子達を押し倒しそうになった俺に、先ず謝ってほしい。
「はぁ……そ、そうですね……」
言えない! 健康的な日焼けした汗ばむ肌に、僅かに漂う消毒液のような匂い。そして魅力的な胸……ではなく、男勝りのような性格に、運動神経が良さそうな彼女にそんな文句は言えない! 喧嘩すれば、必ず俺は負ける!
「ねぇマイコちゃん。これあげる」
全く人の気も知らない新川さんは、一口サイズのゼリーの蓋を開け、マイコの手の届くところに置いた。
マイコがゼリーなど食べるはずがない。どうやら新川さんはマインドレイクを育てた事はあっても、その生態までは詳しくないようで、仮に新川さんが育てたマインドレイクはそれが好きだったかもしれないが、うちのマイコに限ってそんな……‼
マイコは匂いを嗅ぐように鼻をクンクンさせ、ゼリーに引き寄せられるように頭を出し、フハフハ鼻息をたて始めた。
そして釣り餌に食いつく魚のように、ガバッと上半身を出しそれを掴み、両腕を突っ込んだ。
あっれ~おかしいな~。マイコは臭いのきついものは嫌うはずなのに……
「わぁ! 可愛い!」
新川さんはその愛らしい姿に我慢できなかったようで、既にゼリー塗れになっているマイコを触った。
すると邪魔をされたと勘違いしたマイコは、しつこく顔を触る指を掴み、思い切り噛み付いた。
「可愛い~! ほれ、ほれほれ……」
攻撃力の低いマイコの噛みつきでは新川さんを怯ませる事は出来ず、噛み付いた指先を小さく動かされ、からかわれている。
「あ、あの、マイコが怪我するからやめてください!」
マイコの歯は、ほんの僅かという力でも簡単に折れてしまいそうなくらい小さく、俺達は遊んでいるつもりでも、マイコにとっては命懸けになる。
新川さんはただじゃれているだけだが、そんなことも分からないのか! と頭にきて、強めに注意した。
「あ、ゴ、ゴメン……つい……」
ついでは済まされないが、分かってくれたようで、静かに指を離そうとした。が、相当頭にきているマイコは、食いしばる勢いでまだ噛み付いている。
「マイコ。ほら、ゼリー塗るんだろ? 離しなさい」
倒れたゼリーを見せると、マイコはすぐに噛み付くのを止め、「ゼリーを私が触りやすい所に置け!」と指示してきた。随分単純な性格をしている。
それでもお嬢様の命令には逆らえない俺は、指示に従う。しかし上手くゼリーを固定する事が出来ず、結局マイコが満足するまで持ったままになった。
マイコにはそんなことは関係ないようで、先ほどの怒りをすっかり忘れたように夢中で葉にゼリーを塗りだした。
「これ、なんのゼリーですか?」
「これクワガタ用のゼリーだよ。なんで?」
マイコが夢中になる姿に、こんなにも素晴らしいものがあったのかと、敬意をもって質問したのだが、新川さんはもちろん知ってるでしょ? という顔で話す。
しかしそれがクワガタゼリーの事を言っているのか、マインドレイクがこれを好きな事を言っているのかは分からなかった。
「あ、いや。なんでマイコは喜んでるんですか? いつもは蚊取り線香でも嫌がるのに」
「あぁそっち? マンドラゴラは、蜂や蝶のポーターを呼び寄せる匂いが好きなの?」
「ぽーたー?」
この質問に新川さんは、あっ、知らないんだこの人。と絶対思った表情を見せた。
「花粉を運んでくれる虫のことをポーターって言うんだよ。だからマイコちゃんは葉に匂いを付けてるの」
どうやら知識の方は俺よりも多いようだが、考えている事が顔に出やすい性格の新川さんに、軽く馬鹿にされた気がし、ちょっとイラっとした。
「そうなんですか。意外と乱暴そうに見えて詳しいんですね?」
ちょっとした仕返しのつもりで言ったのだが、肘でわき腹を突付かれてしまった。
どうやら口より先に手が出るタイプのようで、かなりフレンドリーに話すが、気をつけようと誓った。
「君、やっぱり変人じゃないでしょ?」
変人? 確かにネット、というより、世間からはそう思われているだろうが、やっぱりの言葉にイラっときた。
「どういう意味ですか! 結構あんた失礼だな!」
勝手に人の畑に居つき、マイコに乱暴な振る舞いをし、挙句に俺を変人だと思っていた彼女に頭にきた。
「いや、そういう意味じゃなくて、気に障ったなら謝るよ。ゴメン……」
そこはゴメンなさいだろう! と思ったが、テントから俺を見守る人形と目が合い、何故俺が変人と呼ばれるか思い出し、冷静になった。
「あ、いや。その……すみません。ちょっと言い過ぎました……」
かなり気まずくなったが、そんな俺達を気にする事も無く、マイコは嬉しそうにゼリーを塗り続けている。御気楽な娘だ。
「いいよ気にしなくて。私は気にしてないから。それに、実は私、精神科の看護婦だったの。それでそうじゃないかと思っただけだから……」
いつの間にか俺が悪い事になっている! 天然なのかわざとなのかは知らないが、完全に主導権を握られてしまった!
「だった? じゃあ今はなんの仕事してんの?」
このまま彼女のペースに合わせるのはマズイと思い、敬語を使うのをやめた。
「今は無職。ネットでマイコちゃん見て、仕事辞めて手伝いに来たの……」
「はっ?」
この人はヤバイ人かもしれない。
ちょっとした恐怖を憶え、無言のときが流れた。
さすがにこの空気に耐えかねた新川さんは、本当の事を話し始めた。
「……実は嘘。休みもないし残業も多いから、辞めてやったの。そしたらどっか遠く行きたくなっちゃって……どこへ行こうか調べてたら優樹君の事知って、それであの写真見たら〝レイ〟のこと思い出しちゃって……それで来たの……」
それで来たのと言われても……困ってしまう。それにいきなり下の名前で俺を呼ぶ。俺よりこの人の方が変人ではないのだろうか?
「レイって?」
「私が育ててたマンドラゴラの子の名前。漢字で零って書いてレイ。高校時代の話だけどね。あの時はたまたま畑で零を見つけたんだけど、なかなか上手く育てられなくてね。でもきちんと花も咲かせて大人になったよ! 零はね、男の子だったの。元気に枝を振って、勇者にでもなろうとしてたのかな? 牛乳が好きで毎日私にせがんできてね、またその姿が可愛いの! 肌も白くてイケメンで、痩せマッチョな感じで……」
「あ、いや、ゴメン。ちょっと話やめてもらっていい?」
「えっ! 何?」
えっ! 何? じゃない! どんだけ喋れば気が済むのか、ペラペラペラペラよく喋る。とんでもなく面倒臭い人と関わってしまった!
「新川……さん、は……」
「里香でいいよ。私も優樹って呼ぶから。いいでしょ?」
顔は好みだが、中身は問題だらけだ! 休みどうこうより、この人は人間関係でクビになったのではないのか?
「はぁ。……いいですよ。それより、新……里香ちゃんのマインドレイクも動き回ったの?」
「ちゃんはやめてよ~。私もう二十四だよ?」
その情報はどうでもいい。
「動き回ったの?」
「うん。歩くことは出来なかったけど、四つん這いになって動きまわってた。でも足を出したがらなくてすぐに土に刺そうとするの。そのたびに畝は崩すし葉っぱは引きずるしで、体中傷だらけなの。でも男の子だからそれぐらいはいいよね? あ、男の子って言ってもアレは付いてないよ! 私は別にそんなことは気にしてないけど、一応パンツは穿かせてた。だって……」
「あの! ちょっといい?」
「どしたの?」
自分では気付いていないようだが、喋りすぎだ!
女性とはこういうものなのかもしれないが、それでも喋りすぎだ! マイコにはこうなって欲しくない!
「それで、零は今どうしてんの?」
「……死んじゃった……」
「…………」
やはりマインドレイクを育てるのは簡単ではないようだ。
「それでもちゃんと天寿を全うしたんだよ、種も残したし……」
あまり深く聞くのは可哀想だと思ったが、それでもマイコのためには聞いておかなければならない。
「じゃあ子供は残したんだ?」
「うん。でも発芽させるのは難しくて、やっと一本芽を出したと思ったら一年しか持たなかった……」
「その子も動いたの?」
「うんうん。最初の数年は球根を育てるだけみたいで、ちっちゃいラッキョみたいのが出来ただけ……でも! 凄く気温の変化に弱いみたいで、その年冷夏だったから……」
「じゃあ、マイコはどうやって赤ん坊の姿になったと思う?」
「たぶん二年目か三年目くらいの球根だと思うよ。たぶんそれも奇跡に近い確率だと思うけど……」
発芽させる事も難しく、赤ん坊の姿になるのはその中の一握り。さらにそこから今のマイコのようになるには、どれほど奇跡が必要なのか……
そんなマイコが俺と出会い、こうして触れ合うことが出来るのは、偶然なのか必然なのかは分からないが、それを知る必要も考える必要も必要ないだろう。親というのはそういうものだ! とゼリーまみれの小さなマイコの手を見て思った。
「その……」と言いかけたとき、マイコがゼリーをグイっと押し返してきた。どうやらもう満足したらしく、蔓を太陽が当りやすいように伸ばし始めた。
「手伝ってあげようか?」
新……里香が声を掛けると、マイコはお願いという感じで蔓を持ち上げた。
初対面の理香にマイコがそんなことをお願いした事に驚いたが、同時に里香が本当に悪い人ではないのだと教えられた。
俺でも勝手に触るとたまに怒るくせに、里香にはいきなりお願い。親としてはゼリーでつられたことも、俺に頼まないこともかなりショックだが、女の子同士気が合うのかもしれない。
がさつそうに見えた里香が、優しく布団を直すように蔓を伸ばし、マイコはもう少しあっち側と指示をしている。その姿はそれを証明していた。
里香の手も借り、蔓の位置をお気に召したマイコは、両手でお椀を作り、口をパクパクさせた。水が欲しいのだ。
「何? マイコちゃんはなんて言ってるの?」
「水が欲しいって」
ペットボトルの水を指に付け、数滴マイコの手に注いだ。
「へぇ~。零とは全然違うね?」
「零はどうやってたの?」
「口を開けて、カッ、カッ、カッ、って喉を鳴らしたの。早く欲しいときは両手をこうやって鳥みたいにばたつかせるんだよ? カラスみたいでしょ? でもね、マイコちゃんみたく手を出さないから、霧吹きで掛けてあげないと怒るの。これどうやって教えたの?」
また長々と話すのかと思っていたが、話を区切ってくれて助かる。
「パクパクは俺の真似。手を出すように……」
マイコはおかわりをくれと再び手を出した。先ほどの水は土に湿らせ泥にしている。
「何? 泥遊び? マイコちゃん結構大きいのに?」
「違うよ。泥でパックすんだよ」
そう言いながらマイコの手に再び水を注いだ。
何をしたいのかは分かっているが、マイコのペースで水を上げないとむくれる。
「泥パック! 自分でするんだ? 凄いね!」
「零はしなかったのかよ?」
だんだん里香が鬱陶しくなってきた。今はマイコに集中したい!
「男の子だからね。泥遊びはしてたけど、大きくなるとしなくなっちゃった。でも、泥塗ってあげないとすぐ日焼けして硬くなっちゃうんだよ?」
それを聞いてドキッとした。もしマイコが男の子だったら、そんなことを知らない俺はマイコの肌を硬くしていた!
「それほんと!」
「知らなかったの!? 気をつけないと、腕とか上がらなくなっちゃうよ! でもしばらく日に当てなければ元に戻るから、安心して」
「しばらくってどれくらい?」
「一週間くらい」
「一週間!」
マイコにとっての一週間はとても長い時間だ。今このときに限っては、里香との出会いに感謝した。
「教えてくれてありがとう」
「どう致しまして」
マイコは本能的にそれを知っていたのか、それともただ気持ちが良かっただけなのかは分からないが、泥を作り体に塗る姿を見てホッとした。
ホッとすると、今度は里香と腕が当る距離にいる事に気付き、さっきとは違う意味でドキッとした。
今まで一度しか彼女がいた事のない俺には刺激的な状況だ!
しかし人生経験を積んだ俺は、慌てること無く少し距離を開けた。
里香はそれに気付いていないようで、マイコが泥を塗るのを、目を輝かせて見ている。
「なぁ? さっきマイコが女の子で羨ましいって言ったけど、なんで?」
いつの間にか自分の言葉遣いが、かなり親しい間柄に使うものになっている事に気付いたが、里香にはそれで良いと思い、下手に気を使うのをやめた。
「だって女の子だよ! 見た目も可愛いし、仕草も可愛い! 男の子も確かに可愛いけど、やっぱり男の子には守ってもらいたいでしょ?」
でしょ? って言われても俺には分からない。このテンションではまた長話になりそうで、なんとかして話題を変えようと思った。
「あ、あのさぁ、零は男の子だったんでしょ?」
「そうだけど?」
「やっぱり顔つきとか体つきとか違ったの?」
「うん。髪の長さは変らないけど、胸はぺったんこだし、顔つきもマイコちゃんと全然違ったよ。それに、腕にもちゃんと力コブあったよ?」
「体の大きさは?」
「今の年齢だと……マイコちゃんより少し大きいくらいかな?」
「マイコの栄養は足りてると思う?」
「う~んそうだなぁ~。分かんない! でも元気だから大丈夫だと思うよ?」
さすがにそこまでは分からないのは当たり前だが、元気である事は間違いないようで、それが聞けただけでも十分だった。
「そうか、それなら安心した。ほかの子は小さいから、マイコもそうなのかと思って……」
それを聞くと里香は畑を見回し、発育の悪い子供たちを見た。
「たしかにね? 私もそう思った。でも花咲かせてる子もいるし、大丈夫だよ! 私はその辺の知識は詳しくないけど……」
里香がそう言うと、理由は分からないが、何故だか安心した。
「優樹はしっかりお父さんやってるよ! だから自信持ちなよ!」
里香はただ励ましのつもりで俺の肩を叩いたようだが、娘の前でそういう事はやめて欲しい! しかし、
「あ、ありがとう……」
そう言わざるを得ない自分がいた。
「ねぇ?」
「何?」
「さっきさ、優樹“マインドレイク”って言ったよね?」
ここで里香が、不思議な事を訊いてきた。……もしかして、マイコはマインドレイクではないのか?
「あぁ。それが?」
「マインドレイクって何?」
散々レイを育てたって言っていたのに、今さら里香は何を言っているのだろう? マンドラゴラを知っているのに、何故その質問が出来る?
「マンドラゴラの別名だよ? 知らなかったのか?」
「えっ? マンドレイクじゃなくって?」
「…………えっ?」
「えっ?」
いやいやいや。まさかそんなはずは無い! Googleで何度も検索したし、里香が勘違いしているのだろう。
「そんなわけないだろ? マインドレイクだよ?」
「え? でもそれだと、マンドラゴラじゃなくて、マインドゴラになっちゃうでしょ?」
「えっ?」
「えっ?」
……………………
………………
……そうなの!?
それじゃあ俺は、ずっと間違って覚えてたって事!? 今まで散々RPGとか漫画読んできたのに、間違って覚えてたの!? Wi-Fiの事を、ずっとウィーフィーって言ってたくらい恥ずかしい! ……ここは誤魔化すしかない!
「まっ、まさか~! そっ、そんなわけないだろ? 確かにマイコはマンドレイクだと思うけど、動く植物なんて存在しないだろ?」
「うん……確かにそうだけど……」
「だ、だから、きっとマイコ達はマンドラゴラの仲間ではあるけど、べっ、別の種類だと思って、俺が命名したんだよ。だっ、だだから、マママママインドレイクで、い良いんだよ?」
「…………」
「…………」
無理か!
「……そうなんだ! 凄いね優樹って! そうだよね! 私もマンドラゴラじゃゴツイなって思ってて、マンドレイクからなんとかカッコいい呼び方考えてレイにしたんだよ? そうだよね! そうすれば良かったんだ! 優樹って本当は凄い頭良いんだ!」
……里香って物凄い馬鹿だ! 普通信じる? 信じないよね~? 自分で言ってても無理あったもん!
「あっ、ありがとう……」
チョロいな。
その後、里香にならマイコのお守りをさせても大丈夫だと思った俺は、マイコを預け、ほかの子ども達の世話をした。
マイコも里香を気に入ったのか、いつもの何を言っているのか分からない会話を始め、里香はそれに上手に相槌を入れ応えていた。かと思えば、今度は里香が好きな物などを尋ね、それにマイコが応える。
俺には分からないが会話は成立しているようで、マイコがモニョモニョ喋りキャッキャッ笑う。
「お前には分かったか?」
かぼちゃに問いかけるが返答はない。男には分からない世界のようだ。
しかしそのお陰で、いつもよりほかの兄弟の世話に集中でき、今までマイコばかりに注いでいた愛情をたっぷり注ぐ事が出来た。




