娘から誰へ?
閲覧ありがとうございます。
百合要素は、残念ながらありません。
「……よし、まずはこれくらいでいいだろう。少し休憩にするか」
「……ん」
私は倉田邑。今日は木隠家にお邪魔して、楓の勉強を教えている。
「邑さん、倉田さん、リンゴが剥けましたよ。みんなで食べましょうか」
「よかったらハーブティーも一緒にいかがですか? ……あ、楓ちゃんの分はふーふーしておくね」
「……ん、ありがとう」
「ああ」
「そういえば、冷蔵庫に沢庵が……」
「それなら私だ。作って入れておいた。ハーブティーに合うか分からないが……」
「あれは倉田先生が持ってきた物だったんですね。わかりました。それも出しましょう」
さきほどまで参考書やノートを置いていたテーブルの上が、花柄のティーセットやウサギの形にカットされたリンゴ、そして沢庵の入ったタッパーによって彩られていく。いや、沢庵はやや浮いているが。
「……んっ、結構辛いんですね」
「邑さんの作る沢庵って、唐辛子の辛味が少し強いんですよね。私はもう慣れましたけど」
「……あまり甘いものが得意じゃなくてな」
「……お姉ちゃんの沢庵は、嫌い。辛いから」
「ふ、楓ちゃん……」
「……大丈夫だ。もう言われ慣れてる。二人とも、気にしないでくれ」
……智恵と木隠墨子に気を遣わせてしまった。……よくないことだ。年長者として、もっとしっかりしなければな。
私は戒めの意味を込めて、辛味成分の強めな沢庵を何枚かまとめて口に放り込んだ。




