2:『チュートリアルは、無しです。』
めっちゃ笑顔だ。
少女がとてもうれしそうにさくらの事を見ている。
右から、左から、下から、後ろから、前から、場所を変え嬉しそうにはしゃいでいる。
どうすればいいのか分からないさくらは固まっていた。
すると、少女は言った。
「お返事はイエスですか?それともハイですか?」
拒否権が一切ないのは変わらないみたいだ。
どうしたものかと考えていると、少女は目の前にしゃがみ込み上目遣いでさくらを見つめていた。
「か、かわいい。」
純粋にそう感じた。小動物のような愛らしさ。子猫にじっと見つめられているみたいな。今にも抱きしめたくなる可愛さ。
すると、少女はさくらの服をギュッと掴み、今にも泣きそうな顔をしてこう言った。
「おねえちゃん、助けて。私の世界が危ないの。おねえちゃんにしか頼めないの。」
「いいよ!おねえちゃんに任せて!」
即答だった。だっておねえちゃんなんて呼ばれて嬉しかったんだもん。
「ニヤリ」
「ありがとー。おねえちゃん大好きーー。」
「一瞬悪魔の微笑みが見えた気がしたんだけど気のせいかな?」
「???」
可愛くとぼけた顔をしているけど、気のせいなのか?
「にこっ」
うん、気のせいだ。絶対。可愛いは正義。
コホンと咳払いをして少女はこう言った。
「改めまして、私の名前は『ノア』です。」
「さくらちゃんには、異世界を救って来てもらいます。」
「うん。ん?」
違和感を感じた。だがその違和感にはすぐに気づいた。
「どうして私の名前知ってるの?」
こう聞くとノアも不思議そうにこう言った。
「だって名前の入力してくれたでしょ?」
そう言われてさくらは3秒ほど固まって思い出す。
「でも、あれはゲームキャラの名前だし。」
「そうなの?嫌ならまだ変更できるよ。変える?」
「そうじゃなくって。」
微妙に話が噛み合わない。
「!」
思い出したかのようにノアは言った。
「ここもゲームソフトの中だよ。」
「なん・・だと・・。」
「正確には私の世界をもとに作られたゲームだよ。」
無い胸を張りながら、ドヤ顔でノアはそういった。
「もっと言うと、ここはさくらちゃんの世界と異世界の間で、ソフトは出入口みたいなものなの。」
さくらは少し間を置いてこう言った。
「な、ナルホド~」
理解したのか、してないのか分からない顔で、曖昧な返事しか出なかった。
だが、そんなことは御構い無しで、話は進んで行く。
「あー、ジョブの選択まだだったよね。さくらちゃんは戦士かな~?魔法使いもいいかも~。」
「わたしは、パラディンとか竜騎士とかがいいな~。かっこいいし。」
「よ~し!じゃあ、魔法剣士で!」
「ちょっと待って!少しは意見聞いてよ!」
「えー、いいじゃない魔法剣士。カッコいいよ!それに、レベル的に上級職は無理だよ。」
「ん!レベルって分かるの?ちょっと気になるかも。」
「さくらちゃんって今何歳?」
「え?16歳だけど。」
「じゃあ、16レベルだね~。」
「年齢=レベルなの!それじゃあ、年に1しか上がらないよ!」
「なんちゃって~☆嘘だよ~。はじめはみんな1からだよ。向こうで魔物とか倒したらちゃんとレベル上がるよ~。」
ノアのボケに突っ込みを入れていたらどこからかアラーム音が鳴った。
「わぁ!もう時間か。」
さくらはそのアラームをどこから出したのか、なんてもう突っ込まなかった。
「他の三人ももう着いてると思うから、さくらちゃんもそろそろ行こうか。」
「えっ!そんな急に!」
「他の3人って何?私の他に誰かいるの?」
「うん。みんなと仲良く力を合わせて頑張ってね!」
そういうとさくらの周りに光が集まって来た。
「ちょっと待って!チュートリアルとか無いの?」
ノアは天使のような笑顔で言った。
「チュートリアルは、無しです。」
もう悪魔の微笑みにしか見えない。
光は消えさくらも居なくなっていた。
そこでノアは気が付いた。
「あ。装備と武器とお金渡すの忘れちゃった。」
少し考えて出した結論はこうだった。
「まあ、いいか~。」




