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出会いは再会

ブックマーク2件

総合評価4点

ありがとうございます!

青く澄んだ空かはの光に白銀の世界が輝きを増し、目が霞む。サクサクと音を立てながら朝から遊んでいる弟、アベルを呼びに家を出た。今朝方から子供達の声が外から聞こえ、その中にアベルの声が聞こえていた。だんだん遠くなる感覚を覚えていたローズは公園に行ったと思う。

公園に着くと案の定アベルがいた。公園といってもローグウルーズ王国筆頭のアグレット公爵家の広い庭の一部を公園として子供達使えるように改装された場所で、安全な場所だ。朝から来ていても怒られないとあっていつも何人もの子供が遊んでいた。

パリーン!!

子供達が投げたボールが運悪く、アグレット公爵家のガラス窓を割ってしまったのだ。

慌てて玄関に回ったローズは扉を取っ手のようなものでノックすると使用人を従えさせたアグレット公爵本人が姿を見せた。

ドクンドクンと心臓が高鳴りを見せた。この鼓動は緊張からではない。心臓の動きだった。走馬灯のように前世の記憶が戻るーーー。

『あなたのことを一生守ります』

『俺は好きではない人と結婚しますが、一番愛してたのはルージュ姫様あなたですよ』

『あなたはそこで笑っていてください』

ーーー蘇った記憶はとても嬉しかった言葉。

そして、アグレット公爵の顔を見てからずっと高鳴るドクンドクンと脈打つ胸の鼓動。

「あの、子供達が投げて遊んでいたボールがガラス窓を割ってしまったようで、申し訳ございません!弁償の方を…」

ローズがぺこりと頭を下げる。 しかし、アグレット公爵はじっと少女を見ていた。

彼もまた、ドクンドクンと胸の鼓動を早めていた。

お互いに胸を高鳴らせ、同じことを思う。

(懐かしい)

あったことも一度ない二人は感覚的に懐かしいと思った。心の底から湧き水が湧き出るようにじんわりと暖かみを帯びていく。

自然と無意識に二人から出た言葉は……

「ノワル……?」

「ルージュ姫様……?」

後ろに控えていた使用人は目を見開いていた。主人の名前ではない名前がローズから発しられ、すぐさま捕らえようと動こうとするがアグレット公爵がそれを制した。

「そのノワルという男の苗字は?」

問われ少し思い出そうと目をそらした。

「アグレアーブル」

「その者の職業は?」

ふっと口元を緩ませ甘い顔になったように感じた。

「騎士…専任騎士で……す」

騎士という言葉を出した時ふわり抱きしめられ言葉が詰まった。

抱きしめられた感覚がとても優しくて暖かい。そして何よりも嘘で傷つけ続けたい魂がゆっくりと修復される感覚。

抱きしめられたまま首元に吐息がかかる。その吐息は苦しみと嬉しさを孕んでいる。

「ルージュ姫様が飼っていた動物とその名前は?」

「白茶のチワワでアクワ」

飼い犬の名前までは使用人は知らないことだ。これは決定的な証拠になっただろう。

「ああ、ルージュ姫様……本当に」

「ええ、そうよ。やっと会えた。どれだけ貴方に抱きしめたいとあの時は思ったのかしら」

ローズはアグレットに顎を優しく掴まれ顔が近づく。

「愛していますよ。今も昔も」

そのまま顔の距離がなくなり唇を重ねた。

二人が突然のやり取りに使用人は驚いていたが、主人の命令なしには動けない。

そこに救世主ソヴァールが現われた。

「ローズ姉ちゃん、誤って公爵様の家のガラス割っちゃて、ローズ姉ちゃんが謝りに行ったって聞いて見にきたん………えっ…ちょっと!ローズ姉ちゃんから離れて!」

姉がされていることにアベルは少し赤らめながら二人の間に潜り込み両手で二人を離すように押すと、ローズの腕を両腕で抱えるようにして、さらに距離を置く。

「ああ、すまないな。再会で体が勝手に動いてしまったよ。ところで君たち……遊んでいた子達には怪我はないんだな?」

少し怪しみながらも頷いたアベルにアグレット公爵は微笑んだ。

「そうか。なら良かった。ガラスのことは怒っていないから気にしなくていい。家の敷地内で遊ばせているんだ。そんな事百も承知だ。さあ、朝食の時間だ。行きなさい」

その言葉にローズは安堵する。子供達に怖い思いをさせなくて済むと思うと少し張っていた心が落ち着く。そして、かつて愛していた人の魂を持つアグレット公爵に見つめた。

アグレット公爵はノワルの面影を残していたけれどはっきりとした風にはわからない。けれどノワルだとわかるそれに嬉しさを感じる。

「ローズ姉ちゃん行こ。公爵様それでは失礼しますと言いたいんだけど、さっきの状況は母さんに話しますよ」

アベルの神妙な声にアグレット公爵は微笑みで返す。

「ああ、構わない。昼頃にローズ様と君と君たちの母上と他に兄妹がいるなら連れて構わないからここにきてくれ、今日は平日君の父上は仕事だろう?その時話そう。ローズ様その前に聞いていてももちろん構わない」

アグレット公爵の言葉に目を丸くすると慌てて頭を下げ、足早にその場を去った。


「大変!母さん、父さん!」

家に帰るなり大声で両親を呼ぶと何事かと二人して顔をのぞかせた。

「それがアグレット公爵家のガラスが割れちゃって、ローズ姉ちゃんが謝りに行ってくれたんだけど。心配で様子を見に行ったらローズ姉ちゃんアグレット公爵様にキスされてて……」

両親の反応はそれぞれ違った。父親の方は嘆くように項垂れ、母親はなんだか嬉しそうだった。

「まぁ、公爵様にキスされたの?」

「それでは昼頃に父さんは仕事だろうから俺たち兄妹と母さんで昼頃家に来て欲しいって」

その言葉にカグリとさらに頭を下げた父親の顔は悲しそうだ。

「家に来る前にローズ姉ちゃんから話聞いてもいいって言われたけど?どいう事なのかさっぱり」

三人はローズに視線を向けると恥ずかしそうに赤らめながら起きて来た末っ子の妹ルミアに抱っことせがまれ抱き上げながら口を開いた。

「キスは念願だったの。私たちは今の姿では今日初めてあったけれど、

この姿になる前から知ってるの。今も昔もその人を愛してたから、すごく嬉しかった」

さしたら邪魔が入るしと口を尖らせながら笑うとダイニングに姿を消すと残された三人は明かされた真実に口が塞がらなかった。

甘くなりましたかね(〃ω〃)

よく使われる救世主はメシアですが今回はフランス語です^_^

英 セイヴィア savior

英 メサイア Messiah

英 メシア Messiah

仏 ソヴァール sauveur

伊 サルヴァトーレ salvatore

独 エアレーザー Erlöser

独 ハイラント Heiland

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