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N.river 連作お題短編集  作者: N.river
お題連作 3回目(2023 note内 【毎週、ショートショート】ヨリ 400文字縛り)
37/39

第8話 アイウォンチュー の願い(お題:塩人/I魚人)

ありがとう、オー・ブギョウ!


手を振る伝書鳩パーティとスケサクらを残し、ひとたび巨大ロボに合体したオー・ブギョウは絵巻にあった男を追いかけ去ってゆく。


「くれぐれもゆく先々ではご用心されよ」

「いつでも困った時は、あたしたちを呼んどくれ」

「そんなことになる前に、あいつらをとっつかまえてやらーな」


オー・ブギョウは最後まで頼もしい。

スケサクらも使命を胸に、峠を先へとひとたび急いだ。近づくお社に「(サイキック)お弁当」も安らぎそのもの、あまた空を飛び交い始める。


「ほう、ついにここまでやってきたか」


伝書鳩のリーダーが感慨深げと仰いでいた。スケサクもならいかけたところで引かれた袖に振り返る。升を掲げて頭を垂れると、男はそこに立っていた。


「おやそなた、塩人(シオンチュ)であるか」


そう、たとえ(サイキック)お弁当が手元へ飛んで来ようとも、食うに塩は欠かせない。おかげで切らした者は塩乞いすると、世では彼らを「塩人(シオンチュ)」と呼ぶようになっていたのである。スケサクは升を掲げるその姿に、てっきり塩人だと思い込んだのだった。だがぶるぶる、男は体を振り返す。


「あ……、Ⅰは、魚人(ウォンチュー)。でやんす……」

「うおんちゅ、とな」


飛び交う(サイキック)お弁当を楽し気と見上げて伝書鳩らは、繰り返すスケサクを置いてどんどん先へと進んでゆく。


「おそれおおくも、魚人(ウオンチュ)の海を守ってもらいたく、お願いにあがりやしたぁっ」


とスケサクへ、男は伏せていた面を持ち上げた。なら驚くことなかれその顔はウロコが覆う半魚ではないか。


「YOU は本物の伝書鳩ではないでやんす。だから巌流島の秘密を知れば魚人を、いんや、お社に(サイキック)お弁当を助けてくださる、そう信じたでやんす」


話は唐突で、スケサクはこれは何者か、と怪しんだ。すると魚人(ウオンチュ)は振り返った彼方へと呼びかける。


「お頭、伝書鳩は先へいっちまったでやんすよ、話すなら今でやんす」


見知らぬ男だ。やおら木立の向こうから現れていた。身構えるスケサクへ近づき丁寧に頭を下げると、巌流島と心お弁当の秘密を語りだす。

(本編のみ 約820文字)

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