第8話 アイウォンチュー の願い(お題:塩人/I魚人)
ありがとう、オー・ブギョウ!
手を振る伝書鳩パーティとスケサクらを残し、ひとたび巨大ロボに合体したオー・ブギョウは絵巻にあった男を追いかけ去ってゆく。
「くれぐれもゆく先々ではご用心されよ」
「いつでも困った時は、あたしたちを呼んどくれ」
「そんなことになる前に、あいつらをとっつかまえてやらーな」
オー・ブギョウは最後まで頼もしい。
スケサクらも使命を胸に、峠を先へとひとたび急いだ。近づくお社に「心お弁当」も安らぎそのもの、あまた空を飛び交い始める。
「ほう、ついにここまでやってきたか」
伝書鳩のリーダーが感慨深げと仰いでいた。スケサクもならいかけたところで引かれた袖に振り返る。升を掲げて頭を垂れると、男はそこに立っていた。
「おやそなた、塩人であるか」
そう、たとえ心お弁当が手元へ飛んで来ようとも、食うに塩は欠かせない。おかげで切らした者は塩乞いすると、世では彼らを「塩人」と呼ぶようになっていたのである。スケサクは升を掲げるその姿に、てっきり塩人だと思い込んだのだった。だがぶるぶる、男は体を振り返す。
「あ……、Ⅰは、魚人。でやんす……」
「うおんちゅ、とな」
飛び交う心お弁当を楽し気と見上げて伝書鳩らは、繰り返すスケサクを置いてどんどん先へと進んでゆく。
「おそれおおくも、魚人の海を守ってもらいたく、お願いにあがりやしたぁっ」
とスケサクへ、男は伏せていた面を持ち上げた。なら驚くことなかれその顔はウロコが覆う半魚ではないか。
「YOU は本物の伝書鳩ではないでやんす。だから巌流島の秘密を知れば魚人を、いんや、お社に心お弁当を助けてくださる、そう信じたでやんす」
話は唐突で、スケサクはこれは何者か、と怪しんだ。すると魚人は振り返った彼方へと呼びかける。
「お頭、伝書鳩は先へいっちまったでやんすよ、話すなら今でやんす」
見知らぬ男だ。やおら木立の向こうから現れていた。身構えるスケサクへ近づき丁寧に頭を下げると、巌流島と心お弁当の秘密を語りだす。
(本編のみ 約820文字)




