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N.river 連作お題短編集  作者: N.river
お題連作 3回目(2023 note内 【毎週、ショートショート】ヨリ 400文字縛り)
36/39

第7話 心(サイキック)の秘密(お題:アナログ巌流島/デジタル混入島)

その昔、人里離れた地で腕比べと、剣を交えた者らはいた。


名はムサシとコジロー。

闘いの地は巌流島。


果たして、取り決めの時刻に甚だ遅れたムサシに苛立つコジローのイライラ(パワー)と、しかしながら厚かましくも2本の剣で闘いに挑むムサシの図太い(パワー)は激突している。互いは荒ぶるままに嵐を呼ぶと、嵐は島を覆って海もまたおおいに荒れさせた。


見かねて宮司は間に入っている。後に「(サイキック)お弁当」を授けることとなる社の宮司だ。

だが二人は聞かず、荒らされた海に海神(ワダツミ)もまた困り果てると宮司と額を突き合わせた。そうして二人を心行くまで闘わせてやればよい、と別の場所へ移すことを決めたのである。


そう、巌流島ごとだ。


「コンパイルしたのよ」


三両で手に入れた別人の顔でお頭は言った。

傍らには定着の様子をうかがい鬼も浮いており、聞いて子分はぎょっ、とする。


「し、しー言語でやんすか」


うなずくお頭の新しい顔が剥がれることはない。


「デジタル圧縮。島もなにもかもいっしょくたに小さくして、お社の片隅に移したんだ。だがそんなことになっても闘う二人に、今もそこからとてつもないエネルギーは放出されている」


と子分はごくり、生唾をのんだ。


「そ、それが『(サイキック)』の正体。で、やんしたか」

「危機を知らせに行くだと?」


ふん、とお頭の鼻は鳴る。顔はすっかりお頭のものになったようだ。鬼も仕上がりに満足している様子だった。


「大ボラ吹きどもめ。伝書鳩こそ悪党よ。運ぶ暗号キーで圧縮を解くつもりだ。奴ら(サイキック)をただの果し合いに戻そうとしてやがる」


言葉に子分もぎゅっと眉を寄せる。


「アナログ巌流島なんて、ただの島でやんす! (サイキック)がただの果し合いに戻れば、腹も膨れんでやんすっ!」


しかも解凍場所を間違えてしまえば、とんでもないことになるはずだった。


「どちらが闇か決着をつけてやる」


肩を切り返したお頭の目が遠く空を睨む。


「ですけどお頭ぁ、茶屋ではやり過ぎましたねぇ」


言うものだから、子分の頭へお頭のげんこつは落ちていた。


「うるせー、行くぞっ」

(本編のみ 約810文字)

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