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N.river 連作お題短編集  作者: N.river
お題連作 3回目(2023 note内 【毎週、ショートショート】ヨリ 400文字縛り)
34/39

第5話 激突! 夜明けのこむら返り(お題:眼鏡朝帰り/鋼こむらがえり)

「あ、あれはっ、高機動戦隊 オー・ブギョウ!」

木立にしがみついたまま、伝書鳩パーティの一人が声を上げる。


そう、浮かんでいるのは人ではない。人型を模した(カミシモ)姿の巨大な合体ロボだ。五人の勇者が(サイキック)を集結させ、操縦しているのである。


(ここで唸れ、テーマソング!)


気付いた天狗の小鼻が地を剥ぐ勢いで大気を吸い上げた。その顔へ、合体ロボ、オー・ブギョウはやおらくるりと背を向ける。声を高らか天に響かせた。


必殺! 鋼こむら、か、えーりっ!!


一見、足がつったかのように見えるがこれこそ秘儀、後ろ回し蹴りだ。天狗の顔面にロボの足は炸裂する。鼻血は散ってばたばたと降り、のけぞり倒れた天狗に木々も折れると四方八方、飛び散った。


だが天狗はゆらり、ゆらゆら、鼻血を拭い立ち上がってみせる。


「なんと!」

「ハズした、のかっ……」


スケサクは目を見開き、伝書鳩パーティからも声はもれた。すると一人が「あっ」と指を突き付ける。


「一人足りないのですっ。あそこをっ」


促されて目を細めれば、確かに巨大な合体ロボは目をショボショボさせていた。

眼鏡がないのだ。担当する戦隊員は欠けていた。だから近眼だろうと老眼だろうと見えていない。おかげでシンをはずしたに違いなかった。


見抜いた天狗がここぞとばかり後じさってゆく。挙動のおぼつかない合体ロボは明らかに相手を見失っていた。


一体どうすれば。


あいだにも、天狗はひとたび胸へ大きく息を吸い込んでゆく。

声はそのとき空へと響いた。


「よっ、待たせたなっ。ちょいと調べもので乗り遅れちまったぜっ」


明け始めた空の向こうから、(サイキック)を吹かせ眼鏡はぴう、と飛んでくる。迷うことなく逆噴射。合体ロボの顔面へぴたっ、とはまり込んでみせた。

とたん合体ロボの目は開く。眼鏡のガラスもキラリ、光った。


(唸れ唸れ、テーマソング!)


「天狗、お前にケリなんざぁ、必要ねぇ。立て札の文言はニセモノだ。このくもりなき眼鏡でしっかり暴かせてもらったぜ。本当の合言葉は、こうだっ」


半分ッ! ろうそくッ!


唱えた瞬間のことだった。天狗は足から霧となる。白く霞むと明けの峠に消えていったのだった。

(本編のみ 872文字)

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