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第3話 いかがわしいヤツら(お題:半分ろうそく/三分豚足)
「峠を抜けるに合言葉か」
ふふん、と鼻を鳴らしたのは伝書鳩パーティより先んじて、山のふもとに辿り着いた男である。
「へえ、この山にゃあそらおっかねぇ天狗がおりやして、合言葉を言えぬものは頭から食われちまいます。ですから通り抜ける村のもんがここに合言葉ぁ、書いて立てかけておるんでやんす」
ふふん、と聞いて男はまた鼻を鳴らす。したためられた立札の合言葉を読み上げた。
「……はん分、……ろうそく。字が消えかかってよく読めんな」
「そいつぁ、都合がいいではございやせんか、お頭」
すると今度は手下がいひひ、と肩を揺らした。やがてにんまり男も言い草に頬を緩ませてゆく。そそと懐から矢立てを取り出すと、中から抜き出した筆先をなめて墨壺に浸し立札へ持ち上げていった。
「これでどうだ」
はん分 ろうそく を 三分 とんそく と書き換える。
「さすがお頭。これで伝書鳩どもも一巻の終わりでやんす」
伝書鳩パーティはまだ何も知らない。
(本編のみ410文字)
この回より、似て非なる「裏お題」もあわせて投入開始




