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第1話 Way to the holy Bento(お題:心お弁当)
時代は混迷を極め、みな神仏に安らぎを求めると道なき道をゆく旅人となり、野山にあふれた。ひもじい旅に宿はない。提げた手弁当が唯一の慰みであった。
ところがあるときスケサクは、もう何年も旅するが、弁当を持ち運ぶ必要はないのだという者に出会った。聞けば「心」で持ち運んでおるから手はいらぬのだと言う。
そんなことが。
スケサクは驚いた。自分はついに安らぎの社へ辿り着いたのでこの力もまた授かっており、そこでは心の持ち運ぶ弁当が空を、右から左へ絶え間なく飛んでいるのだとも聞かされる。
いってみなされ。
うながす背でその時だった。山を越えて遠くからぴゅう、と飛び来る弁当は現われていた。ぱし、と掴んでその者は、お弁当様、お弁当様、手を合わせて包みを解くと白い握り飯へかぶりつく。
これが手弁当、いや「心お弁当」様か。そこに行けば、あるという。空に飯飛ぶ楽園が。
杖を強く握りなおす。頬に飯粒をつけた顔へ別れを告げた。旅の終わりは、もう近い。
(ルビ込み 419文字)




