「詐欺師と少女と、小説と。」 第1話
やあ、勇者くん。
よくここまでたどり着いたね。
けど、ぼくのことはあまり聞かないでほしい。
ただ今、ぼくは空を飛んでいる、ということだけを知るにとどめておいてほしい。
どこへ行くのか、といつもみんなは心配しているようだけれど、心配だからきみもここまで来たのだろうけど、それはさほど重要なことじゃない。
ほらみてごらん。
これできみの辿ったそれが、ぼくの足が、どうなっているか分かっただろう。
そう、ぼくの足こそみんなが踏みしめ歩く橋なのさ。
歩くことを捨てて代わりにこの橋を手に入れぼくは、歩くきみらのために伸ばしてつないで飛び続けている。だからやっぱり行き先よりも、飛び続けることの方がぼくにとっては大切なんだ。
行き先なんて、どうでもいい。
だってぼくが落ちたりしたら、きみたちだってただはすまないだろ?
想像力の尽きたモノカキなんて、滑稽でしかないだろう?
わかったなら、ぼくのことはあまり聞かないでほしい。
空を飛んでいる、ということだけが知れたなら、それで十分だってことだ。
さあ、つなぐ道行、物語を追うように、ぼくを信じてただ渡りたまえ。
そこに橋はかかり続け、きみらもずっと遠くへゆける。
迫る闇も切り立つ崖も、目にしたところで覚えた疑念は、ぼくが必ず拭い去る。
きみから必ず拭い去る。
わかったなら、ぼくのことはもう忘れたらいい。
よく来たね、勇者くん。
さあ、ペンを取りたまえ。
お題・・・繋ぐ 橋 夜空




