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N.river 連作お題短編集 作者:N.river

お題連作 1回目(2013)

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 感想文のようだった物語を読み終えて、とびうおはひときわ強く尾びれをしならせ水をかいた。
 頭上にぐんと水面は近づき、まさに魚眼とたわんで大きく広がる。透かしてのぞく空はブルーグレーで、破いてあけた穴のような白い雲が浮かんでいた。眩しさに白くはれ上がったその世界は、まるでこことはルールが違っている。
 それにしても読み終えた物語はつじつまが合い過ぎていて、ハナから全てが済んでしまっていたことのようだった。一度、誰かが咀嚼したおう吐物には、味さえない。
 そうしてとびうおは、えい、と尾びれで水を叩いた。ナイフのような体はそのとき境界を越え、それでも未練がましく水滴はしがみつくと体を伝った。
 ひと思いに振り払う。
 飛沫と砕けて四散する滴が残す忠告は、いつだって意地悪だ。だから振り返ってなどやらない。迎え入れて次から次に話しかけてくる風へ、ただ自慢のむなびれを広げた。受け止め、聞き流して推力に変えたなら、ブルーグレーの空と併走する。
 さなか蘇った滴の意地悪な忠告は、こうだ。
 風の話は費えるものさ。それとも話し相手を変えてしまうかもしれないよ。
 その物語はつじつまが合い過ぎていて、ハナから済んでしまったことのようだった。そう、彼らのおう吐物にこそ興味はない。
 そうしてとびうおは自分の物語に、まだ何ひとつ済んでいない物語にその身をさらす。そこにつじつまの合う結末などありはせず、無理にでもあてがえばただ不自然でしかなかった。
 するとむなびれをはらませていた風が、とびうおへ笑いかける。
 行き先なら私に任せて。
 とびうおはうなずき返した。
 落ちた影が水面を、分身のように走っている。
お題連作1 (すぴばる内『ものかき屋』コミュ第二期お題【風】)
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