表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

現代貴族

作者: 八百七拾五穀米

みやびは何をしても許された。


花瓶を割っても、

カーテンを破いても、

皿をひっくり返しても、笑って許された。


雅は美しかった。

宝石のような透き通ったブルーの瞳、

しなやかな身体、

気品あふれる所作、

背筋をピンと伸ばした姿に皆魅入られていた。


気まぐれに外に出かけてみれば、

見かけたものがみんな振り返った

年若い子など羨望の眼差しでキラキラとした瞳を向けた。


彼女には奴隷がいた、

食事の準備から身体を清める手伝い。

部屋を出るときにはドアを開け、

部屋に戻るときはドアを開けさせた。


忠実な僕、逆らうことは許さない。


なのに、あの奴隷は私の嫌がることを平気でするのだ、

「許せない!私をあんな狭い部屋に押し込めて!」

友人に珍しく愚痴をこぼしていた。

「何をそんなに怒っているの?」


「あの奴隷が嫌がる私を狭い部屋に閉じ込めて、恐ろしいところに連れていくのよ!」

「まぁまぁ。落ち着きなよ。今日はもう遅いし帰らないわけにもいかないだろ?いつもよりずいぶんと遅い時間になってしまったよ。心配させてしまうんじゃないかな?」

「わかったわ。少しばかり心配すればいいと思うけれど、今日のところは帰るわ。」

「じゃあまた。」


友人と別れて家に帰ると、奴隷が家の前で出迎えていた。

「雅ちゃん!よかった心配したわ。」

わっと駆け寄ってきた奴隷に雅は「フンッ」と鼻を鳴らした。

「家に着いたとたん飛び出してしまうから心配したのよ。無理やり連れだしたこと、まだ怒っているのかしら。」

奴隷はドアを開け家に入るよう促した。

「でも雅ちゃんの身体が心配だからしょうがない事なのよ、これで機嫌を直してもらえるかわからないけど、今日は雅ちゃんの好きな夕食を用意したの。」


 殊勝な心がけだ、許したわけでは無いが今日のところは顔をたてよう。

 今日は遅くまで出かけていたせいで空腹だった。

 銀の食器に盛り付けられた鉱物に免じて機嫌を直しても良くてよ。


 はしたなくもいつもより勢いよく食べ始めてしまった。


「良かった。機嫌を直してくれたかしら。」

奴隷は勢いよく食べ始めた雅を見て、ほっと胸を撫で下ろした。


「おいしい?雅ちゃん」


全て許したわけではない、今度こんなことをしたら許さない。

でも、今日のところはこの奴隷に一言声をかけてやろう、慈悲の一声をかけてやろう…。






「ニャー」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おっ、こうきたか! だまされた。 まさかの、にゃんこツンデレ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ