謎の洋館と不思議な少女②
「おい‼ 誰かいないか‼」
敷き詰められた雑草とそれを古びた柵に囲われた玄関扉を、拳を握り何度も叩く。百八十はありそうなジュンの背丈を、大きくそびえ立つその扉には圧倒される何かが感じられた。
「おいおい……あの門壊してよかったのか? やばいんじゃねぇ?」
「放っておけばいい。もし聞かれたら「自然に壊れました」とでも言っておけ」
「何言ってんだお前……」
活動を止めた自動車の前で道を塞いでいた門は、ジュンの「ワード」によって鎖や南京錠だけでなく門事態も半壊していた。しかしそんな事はお構いなしにジュンは玄関扉をたたき続ける。
それから数秒後、中から特に声が聞こえてくるわけでもなく、静かに玄関扉が僅かに開いた。
「……入っていいって事なんかね?」
「知らん……が、わざわざ開けて来たんだ。邪魔させてもらうとしよう」
そう言うと、荷台から降ろしてきていた荷物を持ち上げ玄関扉を開ける。ギィィィッと不気味な音を立てて開く様は、まるで幽霊屋敷のそれだった。
「おーい、行くぞー」
同じく荷物を肩に掛けたレオンは、後方で立ち尽くしていた二人に声を掛ける。するとその言葉に余りあるほどの元気な返事と、対照的に力ない返事が聞こえた。
――来た。
ろうそくの並べられた薄暗い廊下を歩きながら、少女は自分のいる屋敷に人が入った事に感づいた。
首に掛けた鍵付きのネックレスを胸元に隠し、少女は静かな廊下を走る。その足音は誰もいない廊下に、耳が痛くなり程にこだましていた。
(まずは……あの人達に会わないと……)
少女の頭は、屋敷への来訪者の事で埋め尽くされていた。来訪者を利用する。だが、その前に助けられるのなら助ける。そう思っていた。
「どこへ行く?」
しかし、息を切らす少女の思考を一つの声が遮る。その声の人物は不気味な赤い扉を僅かに開け、体を出してこようとはしなかった。
「…………」
「客人の相手ならメイドがいるだろう。あいつらに任せておけばいい。お前は気にしないで部屋に居ればいいんだ」
「…………」
「返事が聞こえないようだが?」
「……はい」
少女の言葉を確認すると、扉の奥の人物は「不気味な奴だ」と言葉を残し、静かに部屋の奥に戻って行った。
「…………」
よくそんな事が言えるね。
私がこんな風になったのはお前のせい。
あいつらが狂ったのもお前のせいでしょ?
わたしは知っている。
絶対お前の思い通りにはさせない。
絶対に許さない。
あの客人達を犠牲にしてでも必ず。
お前を×す。
短くなってしまいました。すみません。お腹が痛いです。