ようこそ現代へ①
ここは大滝山――。
讃岐山脈の中央、香川県と徳島県の県境に位置しているその山は、ヒノキの人工林や高山植物にありふれている。
そしてそれらが、今現在途方に暮れている少年達を慰める様に大雨から守ってくれていた。
「ど、どうする? 雨……結構強いよな」
「下るしかなかろう」
現代に飛び込む前だった笑顔はどこへやら。引きつった顔で質問するレオンに対して、ジュンは冷めた口調で端的に返す。
自分達のいた世界で流行っていた「異世界旅行」をしたレオン達。その旅はいきなりピンチに差し掛かっていた。
想像していたような夢の世界とは、全く違う薄暗い世界。それに加えて元の世界に帰るための扉がないのだから、彼らにとっては絶望しかない。
「で、でも……こんな場所にずっといたら風邪ひいちゃいますよぉ……」
ジュンの物陰に隠れ体を震わしていた少女が、申し訳なさそうに手を上げる。そしてそれに乗っかる様に金髪の女性・サラも大きく手を上げた。
「そうだよー‼ あたしやリリィはか弱い乙女なんだから、こんな所にいられないよ!」
その言葉を聞くと、三人の意見にレオンは渋々同意した。
「おいレオン。お前辺りを照らせる物はないか? それとひなた、お前は防雨着を持っていただろう」
「あーー……ライト結晶はあった。けどどんくらい持つか分かんねぇぞ?」
不安そうに自分の大荷物からライト結晶を取り出し、それに「まぁいいだろう」と短く返事をする。そしてその一方では、リリィが必死に自分の荷物を漁っていた。
ライト結晶――その名の通り自分の周りを照らすための機械。電気での充電は出来ず、完全なる使い捨てである。しかし低コスト且つある程度の時間は光が持つため、緊急用として非常に人気だ。
かくゆうこのレオンも、念のためを考えて持参してきていた。
「ならさっさとこの道を下って行くぞ。この世界にも大規模な街があるやもしれん。そこに向かおう」
ジュンのその案に、レオンとサラは「おーー」と掛け声を合わせる。
そしてピンクの可愛らしい防雨着を着用したリリィは、心の中でその掛け声に合わせた後、小さく呟いた。
「私達……これからどうなっちゃうんだろう」
自分の旅も始まる気がして楽しみです。