謎解き
「こんにちは~!」
冥界にある願砕亭に入ったときつけられた時計(初期化爆弾)から、拍子抜けするほど明るい声が聞こえた。
「紅蓮の友達の猫内空蓮です!よろしくね!あ、あと一個。その腕時計、爆弾だから。まあ自分たちの家に戻っちゃうってだけだけどね!それを止めるにはこの願砕亭にある謎を解かなきゃいけないの。ヒントはもらったでしょう?頑張ってにゃ!」
一方的にされた時計爆弾を通しての電話はまたしても一方的に切れてしまった。
「な、なに?今の・・・」
「とりあえず・・・謎を解けってか?」
呆然としていた五人だが、自分たちのやるべきことを思い出した。
「ヒントって…あの子たちが言ってた月が消えるまで離さないってやつだよね?」
うーん、と唸っている三人。ただ、凛蛇と蜘蛛妖怪の九土はその三人を見てため息をついた。
「一つ言ってもいいか。」
「?」
「これ、知っているとは思うがタイムリミットがあるぞ。」
「うそ~!」
(言ってよかった)
この二人も苦労が多い。
「とりあえず散策だ。分かれて探すぞ。」
「危険があるんじゃねえか?」
「ないよ~。」
また爆弾から声がした。
「さっき紅蓮が絞めてきてくれたから。今はぶら下げられてるよ~。あ、一人逃げた。あ、蹴り飛ばされた。「ドカッ!バキッ!」あーあー見てられないねありゃ。ということでじゃあね!ほい、これプレゼント。今回は紅蓮も通す気みたいだからサービスしてあげる。いつもしようとすると怒られるんだよねえ。」
「今回は大丈夫そうだがこの間針山逆さにして落っことしたのは誰だまったく…それに通す気はない。」
「え~、それにしては優S・・「ドスッ」うにゃあああん・・・」
紅蓮の声が少しだけ聞こえた。そして、黒い布が出てきたかと思うとそれきり声はしなくなった。
「じゃあ・・・はじめよっか。」
「話を総合するとわかったのはここは願砕楼の庭ということだな。柱には何か入りそうな穴があったんだな?」
「うん。」
「あと見つかったものは丸い形の大理石に、黒い四角い台。で、この台には穴が開いてて大理石をはめたらぴったりはまったよ!」
凛蛇の説明に付け足す彩弓。そこで、再び電話。
「残り時間五分にゃん!間に合いそう?」
「えっと・・・」
「「大丈夫だ。」」
空蓮の問いに言いよどんだ三人。しかし、凛蛇と九土が答えた。
「それはよかった!じゃあね、ファイトだにゃん!」
どういうこと?と説明を求める視線に、ついて来い、とだけ返して歩き始めた二人。三人は、さっぱり意味が分からないままついて行った。
先ほどの大理石をはめ込んだ凛蛇。そしてその後、黒い布をかぶせた。そして、大理石の月が消えた。かちりと音がして、爆弾が取れる。
「どういうこと?」
「まずヒントの月。これはこの丸い大理石だ。それを黒い台にはめ込んだのはこの後することのため。それを柱にはめて、布をかぶせる。こうすれば月が消え、爆弾が離れる。こういうことだ。」
「なるほど。」
「行くぞ。」
そして五人は門に入っていった。
「謎の解読おみごとでございました。」
入ると、メイド服を着た女性があいさつしてきた。
「あの、紅蓮さんはどちらに?」
「それがですね、急用ができたと、空蓮様とお出かけになられました。申し訳ございませんがお二人が戻られるまでお待ちいただけませんでしょうか?」
「でも、もう夜ですし・・・」
「もしお泊りになられるのならすべてのお世話をするようにとのご命令を言い渡されましたので問題ありません。」
「逃げたんじゃないんですよね?」
「はい、明後日には戻ってくると言われましたので。」
「じゃあ・・・お言葉に甘えて・・・。いい、みんな?」
彩弓の言葉にうなずく妖怪たち。その反応を見てメイドの女性は、ではこちらに・・・と部屋へと案内し始めた。実はこの女性はメイド長で、女性しかいないこの願砕楼に勤める1500のメイドをまとめる凄腕だったりする。というわけで、そこかしこで晩ご飯やお風呂などの準備が慌ただしく開始された。