ヒント
「きゃ・・・」
妖怪たちも間に入り、彩弓を助けようとするが間に合わない。彩弓は硬く目を閉じた。
ガリガリガリ!
何かが破壊される音と共に、闇の住人が消えた。
「・・・自分の力を考えた上で無防備なことはするものよ。」
落ち着いた、少し幼さの残る声が聞こえた。
「お姉様の言う通りだよ!」
こちらは、完璧に幼い声。彩弓はゆっくりと目を開ける。
二人の少女が立っていた。背中の羽は蝙蝠の形をしている。紅蓮と同じ、吸血鬼だろう。目の前の二人は、見た目がそっくりだ。周りには何もなく、すべての闇の住人をこの二人が片付けたようだ。地面が大きくえぐれている。これもこの二人の仕業だろう。
「えっと・・・だれ?」
控えめにたずねる彩弓。
「もう少ししたら、わかると思うよ?」
「そう。今は言えないわね。」
「お前たちは、味方か、敵か?」
蛇の妖怪 (凜蛇)がたずねる。
「それも今は言えないかな~。個人情報はちょっと・・・」
「その言い方は誤解を招くわやめなさい。私たちが小さな子供みたいじゃない。」
姿形は子供である。そこで、何かを思い出したかのようにごそごそと首にかけていたポーチを探る二人のうち、一人。無邪気なほうだ。
「はい、これ!」
なにやら本を取り出した。それを彩弓に手渡す。
「これは・・・?」
「私たちからのヒントだよ!用が済んだから帰るね!」
「一つ忠告させてもらうわ。あなたはこれまでの巫女よりも霊力が高い。邪魔に思って殺しに来るやつもいるでしょう、気をつけなさい。じゃあね。」
飛び立ったかと思うと、ものすごいスピードで飛んでいった。
「そういえば・・・これ・・・」
それに全員が目を移し、覗き込んだ。前に読んだ本と同じような内容が最初のほうから連なり、結局、次のページが最後になってしまった。だが、最後のページには、こう書かれていた。
この事件があったのは、約2435年前。そして、破壊の旋律の本名は、乱赤 紅蓮である。
「・・・・・・うそ・・・・・・」
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「で、言いつけを破ってまた屋敷を抜け出し、余計なことをしてくれた、と。」
「「うー・・・・」」
ここは紅蓮の屋敷。そこでは先程の吸血鬼姉妹が紅蓮に叱られている。この二人は、紅蓮の養子である。母紅蓮が娘たちに下したのは、
「よし、晩ごはん抜きだ。」
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」