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三人の決意

「きゃ!?」

「おい!」

落とし穴に落ちるのは何度目かわからない巫女をその度に助けてやっている妖怪たち。さすがに疲れはてている。それとは対象的に、紅蓮は落ちる度にクスクスと笑い声をたてている。

「……そろそろ、な。」

翼を広げ飛び立った。


「何とも無様な様子だな。というか妖怪たちに同情したぞ可哀想すぎだろ。」

「うぅ……。」

上から浴びせられた厳しい言葉に膨れっ面になる巫女。

「これが最後だが……精神崩壊しても知らんぞ?」

そう言いながら、自分も目を閉じ、自分の救いなき過去を巫女の脳に映像として送る。

「!?」

小刻みに震えながらやっとで立っている巫女。崩れ落ちそうになるのを妖怪たちが支える。どうした、と妖怪たちが聞いているが、答えることも出来ない。それとは対象的に、紅蓮は笑っている。

「お前……こいつに何した?」

妖怪の一人が紅蓮を睨み付けながら聞く。普段ならものともしないが、紅蓮は少しだけ思い出してしまった。何度も封じて、封じて、封じ込めて、それでも消えなかった記憶。紅蓮はこの妖怪と関わりがある。

(揺らいではいけない……)

ぐっとフードの奥で目を閉じる。冷静を保ち、続ける。

「当然的に教えるわけがないだろ。バカか。一つ言えることは、巫女が立たねばお前らも死ぬ、それだけだ。」

フン、といつも通りに言い放った紅蓮。自分の本当の感情など出さず、あざむき続ける。

「だめ……そんなの……させない!」

ふらりと立ち上がった巫女。紅蓮はもう少し続けようかなとは思ったが、さすがにまだ成人もしていない少女にそれはキツいか、と思い直す。

(……立ち上がっただけ、よしとするか。)

「……まぁ、半分合格、といったところだな。一つだけなら何でもしてやるし何でも答えてやる。どうする?」

いきなり出された合格に、少し戸惑いながらも、もう考えてあった事なのか、すぐに巫女は言葉を口にした。

「じゃあ……。ローブ取って、姿を見せて。」

「無理だ。」

即答で無理、と言った紅蓮。

「何でもって言ったじゃないですかー!」

「それ以外にしてくれ。」

両腕で×を作る紅蓮。

「それに取ってどうする?お前にメリットはないだろう。」

「だって姿見ないと友達にはなれませんよ?」

「絶対になりたくない!」

「いいじゃないですかー!」

ギャアギャア騒いでいる二人を見ながら苦笑する妖怪たち。先程紅蓮を睨み付けた妖怪を見て、さらに紅蓮は逃げたくなる。紅蓮がローブを取らない理由は、主にあの妖怪に姿を見られたくないからだ。

いまだに騒いでいる巫女の側にいるその妖怪は、紅蓮にとって___

「いいだろ。そんなに不細工ってわけでもないんだろうし。」

「お前に一番見られたくないんだがな……」

ついぼそりと呟いてしまった紅蓮は慌てて口を押さえるが、もう遅い。

「ほぇ?魅泉に見られたくないってどういうこと?」

完全に巫女に聞かれていた。

魅泉と呼ばれた妖怪も首を傾げる。

(はい死にたいです。あ、死ねないな、私)

他の妖怪(特に狐)にも騒ぎ立てられ、発狂したくなった紅蓮。だんだんと右目が熱くなる。

(サイアクダー)

もー嫌だ、と思いながら、紅蓮は、決意した。左肩を握る。そして。一気にローブを剥ぎ取った。

月に照らされて、濃い紫色の髪がふわりと揺れる。紅い、闇を宿した冷たい目に、細い体。背中にある羽が、月をバックにしてえている。そして、右目には、眼帯。

「わ……綺麗……」

巫女がそう呟くほどに、紅蓮は美しかった。

「……?」

「引っ掛かっている、といったところだな。」

どこかで見たことがある、と思い出そうとする魅泉に、フッと笑うと、

「全てが憎い。だから、壊す。全てを、消しつくしてやる!」

いきなり、そんな言葉を口にした。そして、魅泉も思い出した。

「お前は……!」

「その先はあまり聞きたくはないのでな。用があれば来い、多少は相手をしてやる。」

そう魅泉の言葉をかきけすように言うと、みすずを渡した時のように、消えてしまった。そのとき、魅泉は決意した。そして、巫女も、決意した。



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