【2】 契約確認
「なぁ、ウンディーネ。少し聞いていいか?」
「はい、なんでしょう?」
光に包まれた空間で、ずぶ濡れでグロッキーな表情の少年——透水純は問うた
問われて答えたのは、絶世の美女
群青の髪、青いドレス、ラピスラズリのような瞳をしているその美女は、人間ではない
正体は、かの有名な四精霊の一体
水の精霊ウンディーネである
「俺ら、異能を手に入れたけど、何かルールとかあんのか?」
「あぁ、まだ言ってませんでしたね」
ウンディーネは背後で背を向け、念力のように気を集中させている少女に声をかける
「蒼波流魅。あなたも話があります。聞いてください」
「ふぅ……なんでしょうか?ウンディーネさん」
少女が振り返った
美しく整った顔と起伏のあるボディラインの美少女の名は、蒼波流魅
気の強そうな顔をしていて、暴言は少なくないが、純の手綱を握って悪さを起こさないようにしていたり、面倒見はいいらしい
純と、純と同じ高校一年生の彼女――流魅――は下校中にこのウンディーネと遭遇して、契約して、力を得た
流魅は、水の運動を操る、液体操作と言う能力を手に入れて
純は、水属性なのか思わず疑問を浮かべてしまう、憧れの主人公とは明らかに違う脇役キャラが持つ異能、透明化の力を手に入れていた
「これから、あなた達の異能について説明します」
「はい」
「俺たちのうちにある異能について……詳しく聞こうじゃないか!」
ウンディーネは語る
「あなた達の力は、わたしとの契約時の心情や体形などで決定しましたね?」
「それはウンディーネも言ってただろ?」
「はい。わたしが言いました。それで、その能力についてです。あなた達の能力はさらに、その時ごとの心情や、状況にも対応して、変化するんです」
火事場の馬鹿力のように、ピンチになれば力は強くなり
心が凹んでいれば、能力も不完全になる
と、ウンディーネは語った
「でもこれらは単純な思考です。実際は更に複雑に影響します」
「つまり……厨二病を直せば俺も水流操作とかできるようになるのか!?」
純は聞いたとたんに目を輝かせて飛び上がる
「いえ、契約時の能力に差異が出る程度だとおもいますよ」
「……」
純は一瞬で黙り込み、しゃがみ込んだ
「それから、もう一つ重要な事があります」
「……」
「なんですか?」
「あなた達が能力に干渉するように、能力もあなたに干渉する事があるんです」
「それって……」
「あなた方の肉体や感情に影響するかも知れない、ということです」
いわば、これは能力を持つ事への代償だ
能力により、自分自身が変わる可能性を持つ
もちろん、可能性に過ぎない為に代償と呼ぶのはいささか微妙だが、それでも不都合には変わりない
「それがどのような形で影響するかはわたしにもわかりません。ですが、ご了承ください」
「そんなに派手な事にはなりませんよね?」
「体の色彩が僅かに変わったり体内水分量に変化があるか無いかですね。殆どないでしょう」
「じゃ、そんなに気にする事にはなりませんね」
「フッ……異能を持つのに代償を支払うのは当然だな」
流魅と純はそれぞれウンディーネの言葉を脳裏において、さらに決意を固めた
「あ、そうでした、あまり人前で能力を使うのは避けてくださいね?」
ウンディーネが思い出したように付け足す
「どうしてだ?」
「敵は、どこから見ているかもわかりません。相手に力を知られている状態から戦闘を開始すると不利に進む事もありますので、極力人目のつくところでは使わないでください」
「そうか……ま、わかったよ」
「心得ておきます」
そこで、沈黙が包み込む
「わたしからの話は以上です。これから先、あなた達はその身に宿る異能で、悪と戦ってもらいます」
「まかせろ」
「こうなった以上、全力で努めますよ」
「……本当にありがとうございます。それでは、この空間から解放します。現実世界では時間は経っていないので、ゆっくりお帰りになってください」
「次は、いつ会いに来るんだ?」
「あなた達がわたしを呼んだら訪れましょう。悪の気配が近づいたときも、知らせます。」
「よろしくおねがいしますね」
「では……健闘を祈ります」
「おう」
「はい」
純たちの周辺に広がる光の世界が輝きを増して、閃光に包まれる
こうして、純と流魅は現実世界に戻って来た
これから先に待つ戦いは、命がけの死闘
二人の戦いは、始まった
お久しぶりです 永久院悠軌です
えー、誠に申し上げにくいのですが
執筆の調子が優れない 一種のスランプです
今回の話も2000字に満たない、僕の過去の話の中では恐らく最短です
でも、わりと伏線多めの重要な話だったり……
おっとネタバレはいけない
取り敢えず、更新が遅れた事をお詫び申し上げます
これからも、ご愛好をよろしくお願いします