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【1】 チカラの発現

「契約は完了しました」

ウンディーネの言葉と同時に、まこと流魅るみの手にあった(さかずき)が消え、純は両手を開閉して体の調子を確かめる

「フッ……この全身に漲る感覚……間違い無くチカラは手に入ったか……」

「わ、私は何ともないけど……?」

「チカラの実感は行使をした際にしか感じられないはずですよ」

「そう言う気分だ」

何はともあれ、契約は完了した

純の言う通り、二人にはチカラが存在するはずなのだ

「では、元の世界に戻ってからチカラの正体がわかっても応用が利かないので、今、確認しておきましょうか」

「な、なにぃ!?こう言うのは敵の刺客とコンタクトをとってから異能に覚醒して撃退するのが王道では……!!」

「今確認しておかないと戦術や、カバーエリア、注意点も変わってきますから」

「そうですよね。ウンディーネさん。でも、どうすれば確認できるんですか?」

「少なくとも水属性である事は確実なので、この周辺に水を出現させましょう。色々と試してください」

ウンディーネが二回柏手(かしわで)を打つ。と、彼女の背後の光の床に透明の水が入ったプールのようなものが構築された

さずが精霊である。柏手二回で異能バトルものの水属性異能力者が使う全力ほどの力。

もはやウンディーネ本人が悪を滅ぼせばいいのでは?と、思わなくもないが、恐らくそれが難しいからこそ純と流魅が選抜されて異能を得たのであろう

純が一瞬で作られたプールに歩み、中を見やる

「俺に相応しい異能は……水分凍結フローズン・サファイアだ!!」

叫びながら屈み、その掌を水面に叩き付けた

「凍れぇええええええええええええええ!!」

純が触れたところから広がるように氷の結晶が——できなかった。

水面は叩き付けられた勢いで揺れているだけで、異変は無い

「残念ながら氷結の力では無かったようですね。透水すきみまこと

「フッ……次だ!|誘導降雨(アマゴイ)!!」

純が路上の時の様に叫びながら両腕を広げると同時、大雨が周辺に勢い良く降りそそぐ――事はなかった。

雨粒一つも落ちて来ない。空は光で覆われているが快晴だろう

「雨乞いの力でもないようですね。というか、雨乞いは魔術の一種であって異能として存在はしないとおもいますよ。」

「まだまだ!水分沸騰(ハード・ボイルド)!!」

純がプールを満たす水に向かって掌を向けると同時、勢い良く泡立った水が吹き上がる——なんて事も、無い。

「間違い無く力の名前が間違ってますね。ところで、蒼波そうは流魅るみ、あなたは力を捜さないのですか?」

「私、水属性の異能ってどう言うのがあるかよくわからないので……」

「そうですか。では、よく知っているような感じの透水純の真似でもしながら探すといいでしょう」

「そ、そうですね」

「おおおおおおおおおおお!!液体操作(リキッド・フォノン)!!」

純が勢い良く叫びながらプールの水に両手の掌を向ける。と、水柱が構築される――事も、やはり無い

「何故だ!何故使えないのだ!」

純は頭を抱えてその場に踞る

「蒼波流魅。あなたもあの能力確かめたらどうかしら?」

「え、えぇ……変なルビ振られてるのに……」

「試さないと、ね?」

「わかりました……り、液体操作(リキッド・フォノン)!」

流魅が声を張って掌をプールに向ける——

――ザァアアアア

「え?」

「は?」

「おぉ」

今、流魅の行動に合わせるようにプールの水が全て浮き上がった

流魅と純は呆然と、ウンディーネは感心したように見やる

「蒼波流魅。あなたの力はどうやら液体操作ですね。色々と試してみるといいでしょう」

「た、試すってどうすればいいんですか!?」

何が起きているかよくわからない流魅は掌を浮き上がった水に向けたまま困惑している

ウンディーネは微笑み、ヒントを告げる

「まずは能力の全容を確認します。水を浮かせれる力なのか、水の運動を司る力なのか調べましょう。形を変えてみてください」

「ど、どうやるんですか!?」

「今のあなたには、水の中に感覚があるはずです」

「はい!?そんな……」

流魅は驚愕した

確かに、手を動かす時に力を入れるように、ものに触れた時に感覚を得るように

水に神経が通っているかのように、動かせる気がした

「え、えーと……」

流魅が四角く浮かんだ水の塊に、力を込める

すると、塊は空中で形を変えて球体に変化する

大きな水滴が光の中に浮かぶ光景に流魅自身も見蕩れていた

「蒼波流魅。あなたの力は、液体の運動のを操る力です。色々と実験してみるといいでしょう」

「じゃあ……」

試しに掌を向けるのを止める

「う、浮いている……」

「視界にある水分を操作すると言う事ですか。少々待ってください」

ウンディーネが興味ありげに呟いて指をはじく

すると、空になっていたプールに氷と水が張られる

「っと。こちらも操作できますか?」

「やってみます」

流魅が目を閉じて集中して、力を込める

すると、プールに張られた氷水のうち、水だけが浮かぶ

「熱運動を行い、目視ができる液体のみの操作が可能ですか。恐らく水がベースであればどんな物質でも操作可能。マグマ等の液体は私の領域ではないから恐らく操作不可能……」

ウンディーネは脳内で力の性能を理解して、整理している

流魅は一つの実験をしてみようと思い、空中の水を下ろす

下ろしながら別の形に変化させて……

アメーバのように変形しながら着陸した水の塊は、全部で数百に分かれている

「同時に操作できる水分の個数に限りは無い……っと」

水の塊はさらに形を変えて、細長い柱のようになり……

「水人」

遂に変形が止まると、そこには水で形成された人間の姿があった

透き通る肉体は右手に細長い剣のようなものを、左手に大盾をもっておよそ50対50で向かい合っている

「戦って」

流魅は呟き、見やる

すると水の人間達は勢いよく駆け出し、ぶつかり合った

剣を振り、盾を突き出す

命令通りに戦っているのである

「命令遂行の力もあるのね」

相手がまた死霊術士(ネクロマンサー)か何かで人海戦術で挑んで来ても、こちらも頭数で戦える。よし

「だいぶ能力に馴れて来たようですね。蒼波流魅」

「はい。まだ難しいですけど、それなりには……」

「そうですか。いい事です。透水純が能力を見つけるまでの間もう少し実験を続けていてください」

「あ、そう言えば純は……?」

「あちらにいらっしゃいますよ」

ウンディーネに言われて流魅が見やった先――プールの淵に純は座っていた

シリアスな表情で氷を見つめているが、その目元には涙のようなものが浮かんでいる

流魅が「どうしたの?」と訪ねようとしたが、自分から独り言で呟いた

「フッ……水流操作とは王道の異能じゃないか……」

嫉妬だ

自分が試した時は力は発現しなかったのに流魅の異能が液体操作であったが為に嫉妬していじけているのである

「確かに水属性異能の中で一番王道なのは水流操作だよ……でもさ……ラノベとかだと脇役とか2巻に一回しか出て来ない存在じゃん……だからモブだもん……俺の方が凄い異能のはずだもん……」

キモい

男子高校生が語尾に「もん」をつけながらいじけて独り言を呟いている姿は痛々し過ぎる

「ほら、純もさっさと力を分析してよ。帰れないでしょ」

「……どうせ水流操作なんか小さな街の治安を軽く守る程度の力しか無いんだからさ……世界なんか救えるはず無いし、悪を倒せるわけないもん……」

「……」

聞く耳を貸さない純に少々イラッとした流魅は掌を上に水を固めて――

「――発射」

水の球体を打ち出した

球体は真っすぐと純の方向に飛んで行き——

「おうふっ!」

後頭部に直撃してはじけた

流魅はその様子を終始無言で見て、驚愕していた

「おぉぉおおおおい流魅!てめぇ何しやがる!」

「あああああ、アンタこそどうなってるのよそれ!?」

「あぁ!?何の話だ!?しらばっくれてんじゃねぇよ!」

「アンタ自分の体見なさいよ!!」

言われた純は自分の体を見つめる

そこで純も驚愕する

「す、透けてる!?」

「おや、透水純の異能は透明化でしたか」

ウンディーネはあまり興味ないように言う

だが流魅と純は驚きを隠せない

「透明化って……全然水属性じゃない気がするんですけど……」

「だから言ったじゃないですか」

ウンディーネは数分前の話を繰り返す

「異能はその人が持つ様々な要因で内容を変化させます。恐らく、透水純の心に邪念が溢れていた為に純粋さで釣り合いを取るべく透明化の力を得たのでしょう」

「な、なるほど……」

確かに純はまともな思考の持ち主ではない厨二病患者で、いわば邪気眼保有者だ

だとすればその膨大な邪念が異能の内容に大きく影響していてもおかしくはない

「水の直撃で効果を現しましたが、恐らく水に濡れる事無くても透明化は可能でしょう」

「…………ぇかよ……」

「どうかなさいましたか?」

「使えねえ異能じゃねぇかよ!!」

純は半狂乱で叫ぶ

体も少しずつ戻って来て、今は半透明だ

「何!?透明化!?今の時代安いエロ漫画にしか登場しねぇよそんな能力者!」

「一応、水属性の異能ですし――」

「もっと流魅みたいな水流操作とか水分発生の錬金術の異能とか無いのかよ!」

「ありますけど偶然違っただけで——」

「透明化が異能バトルにおいて役に立つのかよ……!」

純は悔しそうに歯噛みして半眼になる

四精霊の一体のウンディーネと契約をして、得た力が透明化

笑えない程しょぼい

「ま、まぁ、いいじゃんよ純!迎撃戦とか待ち伏せとかの戦いだと有利だよ!」

「敵から攻めてくるのを待って不意打ちで倒す主人公ってどんだけカッコわりいんだよ!」

確かに王道異能バトルだと主人公は絶対的に強い敵に対して正面から立ち向かい、仲間との友情のコンビネーションで勝利する

ほぼ真逆である

「流魅にキレるのもしらけちまったしな……ってかお前、氷水の方で水球撃ってきやがって……」

「そっちの方が頭を冷やすのには最適だと思ったんだけど?」

「馬鹿野郎!いきなり背後から冷水かけられて心臓止まるかと思ったわ!」

「でも、透明化できたしいいじゃん!」

「よくねぇから!今もなんか中途半端に半透明だしよぉ!」

「じゃあ完全に透明化できるように練習しなさいよ!」

「恐らく、透水純の能力は触れた物質も透明化させる能力だと思いますよ」

「ほら!ウンディーネさんだって言ってるじゃん!色々とやってみなさいよ!」

半ば言い合いの状況で純は命令されて、キレた

「だぁあああ!やってやるよ!やりゃあいいんだろ!?」

言って半透明の目を閉じて集中する

不可視化(トランスラックス)!!」

「おぉ」

「え……!?」

関心の声のウンディーネと驚愕する流魅

「完全に……消えた」

「見事な透明化ですね。触れている物質も見事に透けています」

「おりゃっ!」

「きゃっ!冷たい!」

純は透明化した状態で氷を掴んで流魅の首筋に押し当てていた

「やーいやーい!隙があるんだよ水流操作!」

「消し飛ばせ!」

「ぎゃぁああああああああああああああ!」

透明化した純であっても水人には見えてしまうらしく作り出された水人に襲いかかられた純は悲鳴をあげて逃げ惑う

「二人とも能力の飲み込みが早いですね」

ウンディーネは一人呑気に欠伸なんかをしている

「ほんっと、透明化ってなんなんだよぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

純は水人に刃が立たないので叫ぶ



透明化の力を持った純に何が訪れるのか


それは、これから先のお楽しみ





こんにちは 永久院悠軌です

プロローグと同時に公開します


今回は異能バトルもの

しかも残念系

世界観は通常世界で描くつもりです


さてさて、ノリで書いてて平気かなこの小説!



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