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武器は装備しないと使えない

休みの今日の内に投稿。次話からはもっとボリュームを増します、頑張って……多分。

 簡素な布製の服に身を包んだ、黒髪を腰まで伸ばした少女、プレイヤーネーム《Alice》が街道を歩いていた。

 民家が街道に面しており、さらに隙間なく建物が隣接しているその町並みは、どこと無く江戸時代後期を思わせる。屋根は瓦や木の板が散在しているところからも、それは確実だろう。

「ふぅ……良かった。ラッキーな事に日本スタートだ」

 アリスがホッとしたように呟いた。このゲームはスタート地点が決まっておらず、世界中のどこかに完全にランダムで放り出されるのだ。初心者エリア等は全く存在しない。

「それにしても、こんな町並みはどうやって用意したのか……ちゃんとNPCもいっぱい居るし」

 質素な着物を身に付けて歩いている人々は、NPC――人の手によって作られた架空の存在とは、少し見ただけでは解らないだろう。

 彼らとアリスを隔てる違いは、着物か普通の服かぐらいなのだから。

「えーっと、チュートリアルは……」

 アリスは腰にさした巻物を取り出し、開いた。その古臭い見た目とは違い、開くとタッチパネルになっている。

「紙ってこんな手触りなんだ……」

 電子媒体の進歩により次第に紙の需要は無くなっていき、最終的には作られる事も無くなった。

 彼女もそんな、紙離れの世代の1人だからこそ、紙に触れる――とはいっても体感だが、初めてだった。

「えっと――まずはレベル」

 レベルと書かれた項目をタッチすると、たちまち巻物の画面は切り替わった。アリスは1文字も見逃さないように目を走らせる。

『レベルは、一定の経験値を得る事により上昇します。上限等は一切存在しません。ですが、ステータスのアップはプレイヤーが選択出来ず、ステータスのどれかがランダムに上昇します。ランダムですが、戦闘方法にある程度は影響します。』

 ここまで読んで、アリスは驚いた。ステータスがランダムに上昇する等、聞いた事が無いからだ。大概は全てが上がるか、自分で上げるかだろう。

「これじゃあ望んだタイプにキャラを育成出来ないなぁ……戦闘方法が影響っていうのも、どの程度なのやら」

 アリスは困ったように頭を掻く。今までは速度を重点的に上げて、相手を翻弄する戦いを得意としていたのだ。それが出来なくなるのは、かなりの痛手だろう。

 全てを読み終え、次の項目へをタッチすると、次はステータスの項目が表示された。

『ステータスは基本的な物として、攻撃力、速力、防御力、持久力、体力、回避力、幸運があります

。また、その他にも様々なステータスが存在し、その値が上昇する事によって存在が明らかになります。』

「これは……」

 アリスは嘆息した。さすがに説明が最低限、もしくはそれすらも満たしていない程に少なかったからだ。

「まあ、大体は名前で想像出来るけどさ……」

 諦めて次の項目へと移る。次は職業であった。

『職業とは、様々な恩恵を得られる便利なものです。職業に就きたい場合、それに適した行動をすれば自動的になります。例:盗っ人……他人の物を盗む』

「これはまあ……親切なのだろうか」

 微妙な表情をするアリス。逆に言えば、思いがけない職業になる可能性もある為、難しいところだろう。今の自らの職業を確認すると、《自由人》と表示されていた。

「自由人って……いやまあ、確かにそうなんだけど」

 もはや何かを悟ったかの様な表情のまま、次々と読み進める。最後の項目は、ボーナスとあった。

『全てを読破したプレイヤーに向けて、運営からのせめてもの贈り物です。貴女だけの物語を紡いでいって下さい』

 ボーナスの項目が消失すると共に、《鉄製の剣》を入手しました。というダイアログが表示される。アリスはログイン前に読み込んだ説明書に従ってそれを装備する。

「へえ……なかなか良いじゃん」

 人々が行き交う中で剣を抜く訳にもいかず、左側の腰に帯びたそれを軽く持ち上げてアリスは呟いた。先程までの絶望感は吹き飛び、上機嫌である。

「さて……これなら外に居るであろう敵は倒せるかな?」

 顔を上げて出口を探す為に辺りを見渡すアリス。その時ようやく、自分が立ち止まっていたが故に人の流れをせき止めていたと気付き、頬を赤く染めてNPCである周りに謝罪し、人混みに溶け込んでいった――。

誤字脱字誤用等ありましたら、是非ともご指摘お願いします。

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