校門をくぐるとき
あの約束から25分がたった。
結構速く目的のものを手に入れた僕は、5分ほど前から待っている。・・・瀬那君も、今頃は無事、あのおぞましい食べ物を手に入れているころだろう。
「お~い、琴雛ァ~!」
背後の方から声がした。そして、トタトタと小走りで僕に近づいてくる。
「ふぅ~・・・ごめん、待たせたか?」
急いできたらしく、瀬名君は軽く息切れしていた。
「ううん、大丈夫だよ。・・・で、手に入った?」
と、言った途端に、瀬名君の目つきが変わった。
「・・・ああ、手に入ったよチクショー。」
・・・普通に聞いただけなのに、なぜか視線が怖い。
「・・・そんなに人が多かったの?」
きっと人が多くて目が疲れたのだろう。
「・・・いや、朝早かったからな。人なんてほとんど店員だけだ。」
「そう・・・。」
どうやら僕の読みは外れたらしい。じゃあ、どうしてそんなに怒ってるんだ?
「なあ、さっさと食っちまおうぜ。入学式が始まるギリギリに食べるのも嫌だし・・・。」
「そ、・・そうだね!じゃあ、僕からはコレ!」
僕は、透明の袋――――あのおなじみの袋をとりだした。
「はい、エビフライだよ。揚げたてのヤツにしてもらっといたから、普通に食べるよりはおいしいはずだよ。」
袋からパックを取出し、瀬名君に手渡した。
「かたじけない・・・。じゃあ、オレからは、コレだ。」
そういって、半透明の袋を取り出す。
「ホンモノのカニクリームコロッケだよ!コノヤロー!」
なぜか怒られながら、手渡された。・・・ホンモノってなんだ?
「あ・・ありがとう。 じゃ、さっそく・・・。」
僕らはお互いの手の中にあるものを見つめた。
――――そして、決心した。見つめ始めてから、3分ほどたってからのことだろう。
「じ、・・じゃあ、食うか・・・。」
瀬名君が言った。
「・・・うん、そうだね。」
そして、僕たちは割り箸をわる。
『パキンッ』っと乾いた音が辺りに鳴り響き、いよいよ箸をかまえる。
「いただきます。」
『いただきます。』
二人で言って、互いのブツに箸をつけた。
―――すべてがスローモーションのように流れる。
お互いのブツに、箸をさす。
そして、口に運ぶ
ガブッとひとかじり。
カニの、そしてエビの風味が、お互いの口に広がった。
それらを必死でこらえ、ひたすらに噛む。
ついに、飲み込んだ・・・!
そして言った。
「ウエぇ・・・。」
『まずっ・・・。』
そして、お互いの顔を見た。なんだか笑えてきた。
「どう?数字は見える?」
そう聞くと、瀬名君はあたりをみまわした。
「いや、見えない。おまえはどうだ?」
僕は能力が消えたか確かめるために、通りすがったおばあちゃんにあいさつしてみた。
「おはようございます。」
「ああ、おはよぉ~。」
・・・やった・・・・!能力は消えたんだ!
「やったよ瀬名君・・・!」
嬉しくて、少し涙が目に滲んだ。
「ミッション完了だな!」
瀬那君がニカッと笑って言った。
やがて、人が増えてきた。でも、僕らにはもう不安なんてない。これだけ食べておけば、今日一日くらい大丈夫だろう。
「あ、そうだ。口臭が気になるかと思って、ガムも買ってきたんだ。食べる?」
ガムの入った箱を瀬名君にむける。
「おお、サンキュー。」
瀬名君はその箱からガムを取出すと、包み紙から取出し、口に放り込む。僕も口に入れた。
「そろそろ学校へ入るか?」
「ダメだよ、ガム噛みながら登校なんて。」
「・・・それもそうだな。」
そう言うと、瀬名君は超高速で顎を動かし、瞬く間にガムを噛みあげた。そして、ポケットから包み紙をだす。
「・・・これならいいよな!」
数十分前と同じ、いい笑顔で言ってきた。
「そうだね!」
僕も笑って答える。
そして、二人で校門をくぐった。
これだけ食べておけば大丈夫とさっき言ったけど、あくまで今日だけの話。明日になれば、誰も僕のことは見えなくなるだろう。
それでも、『不安なんてない』という言葉は本当だ。
僕は出会えたんだ。〈僕〉という存在に気付いてくれる、瀬名君に。
「ねえ、瀬名君。」
歩きながら言った。
「なんだよ?」
瀬那君が小柄な僕を見下ろす。
「ありがとう・・・!」
返事はしないものの、120%の笑顔で答えてくれた。
僕たちはもう怖くない。
そして、二人で入学式の会場、体育館へ歩いて行った。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました!
そして、純文学をこよなく愛する方、ゴメンナサイ。文学というジャンルで書いていたにもかかわらず、こんなしょうもない話になってしまいました・・。
未熟な作品ながら、感想などありましたら、お気軽にどうぞ。




