出会い②
今日は高校の入学式である。が、僕は今、必死でアルモノを探している。
なぜこのような事態に陥っているのか。その謎を解くには、数十分前をさかのぼらなくてはならない。
~(ものすごく大まかな)数十分前~
僕は朝早くに、今日の入学式の会場である学校に向かっていた。朝早くというのは、入学式が始まる一時間半前だ。三十分前には学校に入っておかなければならないため、僕にとっては入学式の一時間前という気分なのだが。
まあ、そんなことはどうでもいいだろう。とりあえず、僕が早くに学校に行きたい理由はただ一つ。僕が見える人を見つけるためだ。
ここだけの話、僕は日記を書いている。そこには、僕の存在がどうこうと書いているが、実際には全てをあきらめているわけではない。地球上に一人くらいは、僕を見つけてくれる人がいるだろう・・・と思っている。
とりあえず、一番に学校について不自然なことをしてみよう。そして、僕に声をかけるなり、目が合うなりしたら、その人は僕に気付いてくれている・・・はずだ。
そんなこんなで学校に着く。驚いたことに、先客がいた。僕と同じ制服で、しかも鞄が真新しい。つまり、同級生だ。しかし、そいつはジッと地面を見ていた。・・・どうやら、寂しいヤツらしい。
そいつの視界に入るべく、至近距離に行ってみる。しかし、期待はあまりしていない。これでガン無視されても、残念ながらそれが日常。普通なのだ。
しかし、約1秒後、そいつはゆっくり顔をあげた。なぜか目を真ん丸にしながら。正直、僕もそんな顔をしていたと思う。こんなにあっさり出会えるとは・・・。
そして、僕はつぶやいた。
「君は何者ですか!?」
『お前何者だ!?」
そのつぶやきすらも、見事なまでのシンクロ具合だ。
数秒の沈黙ののち、先に口を開いたのは僕のほうだった。
「君は、僕が見えるの?」
すると、男はキョトンとして答えた。
「いや、普通に見えるけど・・・お前は透明人間なのか?」
まあ、それに近いものなのだが・・・・。そして、さらに質問してみた。
「どうして君は驚いているの?」
男はビクッとした。
「そ・・それはだな・・・。」
言いかけて、僕をみすえた。
「オレはお前が見える。お前はそれに驚いた。たぶん、お前は普通の人間じゃない・・と認識しているのだが、間違いないか?」
僕はコクリとうなずく。
「実は、オレも普通じゃない。・・・オレは、目に映るものの数値が見えるんだ!」
「・・・それって、どういうこと?」
僕はよく分からなかったため、聞き返してみた。
「たとえば、そうだな・・・あそこに男がいるだろう?」
男が指をさした先には、スーツを着た男が遠くに見える。通勤中だろうか?
「うん、いるね。」
とりあえず返事をしておく。すると、男は少し目を細めて(遠くだからだろう)スーツの男を見た。
「・・・あの男、身長178.3cm、足のサイズは27.0cm・・・ほかにもいろいろわかるぞ。座高とか。まあ、個人情報だからこれ以上は伏せるが。」
・・・驚いた。「数値が見える」というのはそういうことか。なるほど、僕と同じ雰囲気を感じる。
「オレが驚いたのは、お前の数値は見えないからだ。ほかの人間なら見えるのに・・・。そんで?お前はどうして驚いたんだよ。」
僕は、自分の能力のこと、なぜ僕が驚いたのか、すべてを打ち明けた。
「なるほど、オレたちは同じ系統の人間で、その人間同士だと能力が無効になるということか。」
「そうらしいね。」
僕はなんだか嬉しかった。こんなに親近感がわいたのは初めてだ。
「ま、お互い健闘を祈ろうぜ・・・入学式。」
その言葉を聞いた瞬間、一瞬にして熱が冷めた。
「は~・・・。」
『は~・・・。』
再びのシンクロだ。
「お前は能力を抑えられないのか?」
男が僕に聞く。
「う~ん、方法はあるけど・・・。」
残念ながら、僕にその手段を使う勇気は無かった。
「君にはないの?」
問い返してみる。
「・・・オレもあるにはあるが・・・。」
言葉を濁す。
なんとなく、察知した。おそらく、この男と僕は同じ方法で能力を抑えられるのだろう。おそらく、むこうも察知しているのだろう。
「もしかして、・・・何かを食べる・・・とか?」
僕が聞いた。おそるおそるだが・・・。
「・・・やっぱり、お前もそうか。」
つかの間の沈黙。そして、やはりそれを破るのは僕だった。
「・・・やっぱり、僕はこの入学式、成功したい!」
すると、男もニヤっと笑って答えた。
「奇遇だな。俺も思っていたところだ。」
つまり、お互い、嫌いな食材を食すことを決意したのだ。
「なあ、一つ提案なのだが・・・。」
「何?」
「オレはどうも自分であの食材を買う気にはなれない。だから、お互いの食べなければならないものを買わないか?」
なるほど、それはこちらも大助かりだ。口には出さないが、実は僕も自分では買えない。
「いいよ。じゃあ、君は何を食べなきゃいけないの?」
すると、男はものすごく恥ずかしそうに言った。
「・・・・えび。」
・・・ますます親近感を感じた。
「・・・そうか。ものすごく奇遇なのだが、僕はカニなんだ。」
「・・・そうか。ホントに似てるな、オレたち。」
いい笑顔で男は言った。うん。確かに僕たちはソックリだ!
「そんじゃぁ、行くか!三十分後にここに集合でいいか?」
「いいよ。君、名前は?」
僕も笑顔で言った。
「オレは瀬那真也。お前は?」
「琴雛俊。じゃ、お互いがんばろう!」
「おう!」
そう言って、僕らはいったん別れる。
そして今に至る。僕は瀬那君のためにえびを探す。
そして、とあるスーパーに駆け込んだのだった。




