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とある自己観察日記より

3月28日

                                 

 この世の中には、極めて重要な、信じがたい要素がいくつかある。その数々の要素の中で、オレの中の世界の礎を築く重要なものがある。それは、とある能力の存在だ。

 時に、君は超能力というものをどう考えるだろうか?


  「所詮、誰かが生み出した妄想だ」


  「いや、確かにある。昨日、ウチの前に落ちてたよ」


 等々、様々な意見が飛び交うことだろう。

 残念ながらオレは、超能力とまではいかないものの、天性の才を授かってしまった。それは、「目に見えるものの数値が見える」言い換えれば、「目に見えるものの数値が視界をふさぐ」という、極めて困った能力である。残念ながら、今日までの間、メチャクチャ役に立った! みたいな出来事はない。

 ちなみに、具体的にどういう能力かというと、例にあげれば、初対面の人でも見れば身長やら、足のサイズやらが見えるというものである。しかし、あくまで目に見えるものという制限つきであるため、目に映らない体重などは分からない。さすがにそこまで分かってしまうと、多くの人々を敵に回すであろう。


 まあ、そんなことはどうでもよい。・・・いや、スルーしていいという訳ではないが。重要なのは、視界をふさいでしまうという点だ。確かに見えないように、ある程度の制御をすることは可能だ。しかし、それには少々のリスクがかかる。普通は、能力のためにリスクを背負うものである。しかし、何と言っても、この能力は生まれつきだ。物心ついたときには見えていたのだ。リスクとは、ある一定の理念を曲げるときに負うものであり、その理念がオレにとっては「見えること」だったのである。

 ・・・こうして文章にまとめてみると、やたらとしょうもない能力である。残念ながら生物たる者、自分の境遇を選べないのだ。オレだって選ぶことができたなら、もっと利益のある能力を選んだことだろう。しかし、生まれてしまったものは仕方がない。この能力に受けて立とうではないか。

 そうして、勇ましきオレは立ち向かっていった。己という高い壁を乗り越えることは、実に難しいことだ。そして、見事に、すがすがしいとも言えるほどに、敗北したのであった。

 結果的に残ったのは、周りからの痛々しい視線と、心の傷だけであった。

 しかし、オレは負けずに戦った。・・・ということは決して起こらず、オレは素直に自らを受け入れた。そして、この障害ともとれる能力を役立てることをあきらめたのであった。

 「弱ッチーな」「だっせぇ」 そんなことを言いたい奴は、ぜひ口に出してみるがよい。この数年の間に、心の傷というものを修正し、そういう言葉には決して怯まない、屈強な心を手に入れたのである。

 「そんな屈強な心を持つのであれば、もう一度己と戦ってはどうか」という人もいるかもしれない。しかし、考えてみてくれ。自分が強くなるということは、戦うべき相手、つまり自分も強くなっているということと同義である。これはそのような簡単な問題ではないのである。


 しかし、引きこもってばかりではいけない。どうにかしてこの状況を打開しなければならない。かといって、オレのしわの少ない脳みそでは、もう知恵を絞り切ってしまった。


 とりあえず、オレは人ごみに飛び込めるようになりたいのである。人が多いところでは、視界が数字に埋め尽くされて仕方がないのだ。こんなことでは、数日後に控える高校の入学式という晴れの舞台で大恥じをかくことになるだろう。おそらく、大恥じという漠然とした言い方では伝わりにくいであろう。しかし、そのことについては、あまり思い出したくない思い出が脳に永久保存版でインプットされてしまっている。いわゆる、「トラウマ」というやつだ。一つ言うとすれば、中学の卒業式は大変だった・・・。


 この状況を打開するいい案のある人は、お近くのオレまで。

 あ、オレって言っても分かんないか。オレの名前は瀬名真也せなしんやだよ!よい意見お待ちしてまっす!!


 ・・・なんだか、最後にテンションゲージが振り切ってしまったな・・・・・。

   

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