飛花落葉
拙僧さんに誰デザ3で書いていただいた(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29242688)、うちの子、笹神みやびちゃんのちょっとしたお話を書きました。
本当にちょっとです。
懐かしい、と感じた。
産まれたばかりだったあの子は、口の端からよだれが止まらなくて、夜更けになっても泣き止まなくて。おねしょだって、保育園に入るまではいっつもしていたのに。
それを「あぁもう、仕方ないわね」と口の端を拭いながら、私は自分が娘に向けるこの感情は、まるで小動物や子犬に向ける、人間とは少しズレた愛情であると自覚し、自己嫌悪したものだった。なのに。
なのに……気がつけば、口を拭う回数も減り、布団も汚さなくなっていた。
みやびは、私の娘になっていた。
(いつぶりだろう)
『お母さん ごめんなさい』
『おねしょしました』
簡素なLINEの文面からでも、あの、昔布団を汚したみやびが、幼子の小さなプライドを失って、申し訳なさそうに部屋の隅でうずくまっていた姿を思い出してしまう。
娘の辛い気持ちを想像するのと同時に、私は少しだけ、嬉しい気持ちになっていた。
そしてみやびもまた、私が自分を慰め、許してくれるのを何となくわかっていて、それを余計に情けないと感じてしまうだろう、とまで考えて。
「……はぁ」
……おねしょなんて、ついこの間までしていたような気がする。
高校の入学式だって、数週間前に行ったような気がしている。
あの子が、大人になっていく。
「……いけない。早く行かないと」
お風呂の支度を済ませた私は、洗濯カゴを持って部屋へと向かう。
きっと、どんよりした顔で泣き腫らしているでろう、娘の部屋へと。
ーーーーー
少し、意外だった。
予想通りでもあったけれど、みやびは思ったよりも……深刻な様子ではなかったようだった。
或いは、和らいだ、というべきかもしれない。
みやびの隣では、さくらちゃんが苦笑いをしながら、そのパジャマを夜尿で少し汚していた。
(……良かった)
娘が落ち着いた理由がわかり、自然と目を向けた先、さくらちゃんは、少しだけ私に対してばつが悪そうな様子で、もう一度苦笑いをした。
ーーーーー
「──それじゃあ、お世話になりました!」
(…………)
「うんっ!また…………お母さん?」
(……!)
「え、えぇ、またいらしてくださいね」
家の玄関の前、別れの挨拶をしたさくらちゃんが、荷物を抱えて迎えの車に乗り込んでいく。
「じゃあねっ!みやび、約束だよ!」
車窓から手を振りながら、車が通さがっていく。
まるで、遠い日の思い出のように。他所の子供に重ねる事ではないから、口に出せるものでは無いけれど。
──少しだけ、懐かしい気持ちになれました。
(……ありがとう)
この子の、お友達でいてくれて。




