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第二十四話 別れ

 時間の流れは止まらない。夕子は今頃、どうしているだろうか。そんなことを考えたら、少し笑ってしまった。夕子がいるのは今じゃなくて、ずうっと昔の世界なんだ。

「気持ち悪いから、一人で笑うなよ」

隣に、マモルがいることを、忘れていた。

 マモルも、そしてサユリも、僕が東京に戻ることは知っていたが、そのことにはあえて、触れないことに決めたようだった。僕らは、これからも一緒だ。そんなことに疑いを持たないふりをして、僕らの季節は春を迎えようとしていた。


「三学期が終わったら、東京に引っ越すよ」二月のあるとても寒い夜。父さんが言った。

「わかった」僕も、平気なふりをして答えた。

「今回は、荷物も増えたしな、引っ越しは、業者に頼むことにした」

「そうなんだ」

「それでな、母さんの軽自動車には、父さんも乗らなきゃならないし、荷物も積まなきゃならないから、お前だけ、電車で帰って欲しいんだよ。大丈夫だよな」


 父さんの真意はすぐにわかった。


 引っ越しの日には、マモルとサユリが、送りに来るだろう。

 その時。

 その時僕はどんな態度をとれば良いのか。いや。どんな態度をとってしまうのか。検討がつかなかった。父さんは、家族の前で、僕が照れ臭い思いをしないですむように、そして、後悔のないように、電車で帰ることにしてくれたのだ。つまり、僕らは駅で、三人だけで、別れの時をむかえることになる。

「ありがとう」僕は父さんに言った。

「うん」父さんは、黙ってうなずいた。

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