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第二話 決意

 その頃、僕は小学五年生だった。

 当時、東京に住んでいた僕の耳にも、世紀の大発見のニュースは届いていた。でも、それは所詮、遠く離れた場所でのことであり、僕の生活には何の影響もないと考えていた。

 その夜までは・・・。


 夜、目が覚めると、父さんと母さんがひそひそと話す声が聞こえた。それは、一階のリビングルームからボソボソと流れてくるようだった。二階の子供部屋で寝ていた僕は、その声に何か不穏な空気を感じ取った。

 気づかれないように、そっと階段を半分まで下りた。古い我が家の階段は、どんなに注意しても、足をのせるたびに、ギイギイと音を立て、僕をビクビクとさせたが、幸い、父さんも母さんも、話に夢中になっており、僕が階段の途中で、聞き耳を立てていることには気づかないようだった。

「子供達はどうするの?」

母さんが言った言葉は、僕を不安な気持ちにさせた。

「おいていく」

父さんが言った言葉は、さらに僕を不安にさせた。

「一年でいい。チャンスを逃したくないんだ。あれほど規模の大きな遺跡を調査できる機会は、おそらく僕の人生に二度とない」

しばらく聞き耳を立てていると、なんとなく状況がわかってきた。父さんが言っている遺跡というのは、最近、長野県で発見され、話題になっている『あれ』のことだろう。なんでも、規模が大きいだけでなく、今までにない特徴を持っており、ちゃんと調べれば、大発見になるだろうと、テレビでやっているのを見たことがある。父さんは、その遺跡の発掘に参加したいのだ。僕の父さんは、都内の大学で、考古学を研究していた。

「僕も行きたい。」

階段を下り、リビングルームに駆け込んだ僕は、そう叫んだ。父さんも母さんも、口をポカンと開けている。何が起こったのか、僕が何を言っているのか、理解をするまでの間、二人の中の時間の流れは止まった。まばたきすらもしていない。しかし、やがて、時は動き始める。

「行くか?」

嬉しそうに父さんが叫んだ。今が真夜中だということを完全に忘れている。

「行く!」

僕の言葉で、母さんの心も決まったようだった。


 こうして、僕ら家族は、唐突に長野県に引っ越すことになった。僕と、二歳下の弟の転校手続きは、かなり面倒なものだったようだが、ちょうど三月に入ったばかりで、区切りがよかったことが幸いし、四月一日の転入には間に合わなかったものの、大幅に遅れることはなかった。

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