第十四話 ストーンサークル
遺跡の発掘に、一つの進展があった。遺跡の中央部分に直径五メートル程の、ストーンサークルが見つかったのだ。
ストーンサークル。
円を描くように並べられた石の列ということだ。発見場所は、まさに僕らが光の柱を見た場所だった。大きさも光の柱の太さと一致している。つまり、僕らが見たあの光は、ストーンサークルから発せられていたのだ。でも、それ以上のことは何もわからない。
あの日から数日が経っていた。夕子からは何の音沙汰もなかった。
「夕子、大丈夫かなあ」マモルが呟いた。僕達は、いつものように水野さんの家に集合していた。
「きっと大丈夫よ。消えたってことは、多分、意識を取り戻したってことでしょう」サユリが言った。そう言ったサユリの声にも元気がなかった。サユリも心配なのだ。ただ、無事であることを信じたいのだろう。
「そういえばね。防犯カメラのこと、わかったわよ」
サユリが言っているのは、僕とマモルが双子のビーナスを返しに行った夜のことだ。あの時、僕らは防犯カメラの存在に気づかなかった。本来ならば、バッチリ映っているはずだった。しかし、実際には、僕らの姿は映っていなかった。
「やっぱり、夕子の仕業だろ」マモルが言った。
「そうみたい。実はあの日、心配になって、こっそり後をつけたって言ってたわ。そこで、カメラに気づいたって」
「まあ、そうだろうな。あんなことできるのは夕子だけだよ」マモルが言った。
「でもさ、それならば手伝ってくれればいいのに」僕が言った。
「あの娘。照れ屋で、いじっぱりなところがあるから・・・・」
「夕子、大丈夫かなあ」また、マモルが言った。
「父さん、ストーンサークルって、何に使われてたものなの?」
夕食を食べながら、僕は父さんに聞いてみた。最近は、発掘作業も一段落して、父さんも夕食の時刻までには帰宅するようになっていた。
「いい質問だ」
父さんは、そう言って少し黙り込んだ。答えにつまっているわけではなく、息子にわかりやすく話す方法を考えているのだろう。
「でも、残念ながら」
そう言って、また少しだけ口を閉ざす。
「父さんにもわからないんだ。多分この謎はそう簡単にはわからないだろうな。おそらく、尊達が大人になる頃、その世代の現役の研究者が、調べて調べて調べまくって、そしてまた新しい発見があって、この謎を解決することになるだろう。そしてそれがまた、新たな謎を生むことになる。そうやって、少しずつ、考古学は進んで行くんだ」
言い終わって、父さんは照れたように笑った。
「大学の授業みたいになっちゃったな」
「ストーンサークルって音が鳴ったり、光ったりしないの?」
あの日のことは、父さんに話すわけにはいかない。夕子のことは秘密だからだ。でも、僕は、ちょっとだけ、核心に触れてみることにした。
「そういえば、この前、遺跡に大きな雷が落ちな。その時は、かなりの音と稲光だったけど、ストーンサークルとは関係ないだろうな」
あの日のことを思い出した。確かに、聞こえた音は雷のようだった。でも、光は稲光じゃなかった。あれは、なんというか。そう。光の柱が天空に向かってそそり立っているように見えた。
でも、そのことには、僕ら以外誰も気がついていないようだった。あの光もまた、夕子と同じように、大人には見えない類のものなのかもしれない。ふと、僕は大人になったら、父さんと同じように、遺跡の研究をしてみたいなと、初めて思った。




