第十二話 夏休み
「俺はあれがやりたい。いわゆる、振り向いたら顔が無いってやつ」
マモルが言っているのは、お化け大会でのドッキリ企画のことだ。僕らは、子供むけの度胸試しに協力する振りをして、実際には、大人をビビらせると言う企画を進行中なのだ。
「それな。怖いよな。お前が見たのはこーんな顔かいって、振り向いたらそいつも、のっぺらぼうってやつ」
「うわあ、怖そう」サユリはすでに青い顔をしている。
「おいおい。サユリは、お化け役だからな」
そんな感じで、僕らの計画は決まった。
お化け大会の最後の子供として、サユリが紛れ込む。同時に、僕とマモルも近くにスタンバイ。
サユリを脅かそうと、お化け役の大人がサユリに近づく。それまで、顔を伏せていたサユリが顔をあげる。するとそれが、のっぺらボー。
驚く、お化け役の大人。おそらく走り出すだろう。そこへ、スタッフのふりをして、僕かマモルが節目がちに近づく。
「どうした」
「いや、あの娘の顔が」
「顔か。お前が見たのは、こーんな顔かい」
もちろん、のっぺらボー。
夏休み。
「やっぱり暑いんだなあ」
道の両側から、アブラゼミの声が降り注ぐなかを、僕ら三人は、歩いていた。額からは汗が吹き出していた。僕は、呟かずにはいられなかった。長野県というところは高原で、もっと涼しいと思っていた。でも、やっぱり、日本全国、夏は暑い。
「いよいよね」サユリが楽しそうに言った。
あれから時はあっという間に流れ、今夜、町内お化け大会は開催される。大人達は、自分達が脅かされるとは夢にも思わず、子供を驚かす準備に忙しそうだ。もちろん、僕らの準備もバッチリだ。密かに、のっぺらボーの覆面や、スタッフに見えそうな上着も隠し持っている。あとは、夕暮れを待つばかりである。




