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第十話 ビーナス

「ただいま」

次の日、父さんは元気いっぱいに帰ってきた。

「おかえり、父さん。何かいいことあった?」

もちろん、僕にはわかっていた。昨日の夜。ビーナスを元の場所に戻すのは、思ったより簡単な作業だった。もちろん誰にも見られていない。指紋を残すようなヘマもしていない。

「実はな。お前たちには内緒にしていたんだけど、行方不明になってたビーナスが戻ってきたんだよ」

「へえ。そんな事があったんだ」

「でも、不思議なんだよなあ。ビーナスが無くなってすぐに、防犯カメラをつけたんだけどね」

「ぼ、防犯カメラ?」

僕の額からは汗が流れ落ちた。それこそ、滝のように。防犯カメラ。考えてもいなかった。と言うことは、僕らはバッチリ映ってしまったと言うことか。

「どうした。タケル。顔色が悪いぞ」

父さんの声が通常より、やや低いような気がする。怒っている?

「いえ。あの。すみません」

「でも、不思議なんだよなあ。ビーナスを戻される瞬間の映像が途切れていて、無いんだよ」

「え」

「つまりな。写っていないんだよ。犯人が」


「どうゆうことだろう」マモルが言った。

次の日の放課後、僕とマモル、そしてサユリは水野さんの家に集まった。夕子は来なかった。サユリによると、昨日から見ていないと言う。

「考えられるのは二つ」水野さんが言った。

「一つ。タケルのお父さんが、ビデオにお前が写っているのを発見して、事前に消した」

確かに、状況としては考えられる。でも、どこかしっくりこない。僕の知っている父さんは、例え息子が犯人でも、そんな不正はしない気がする。

「二つ。タケルのお父さん以外の誰かが、お父さんを守るために、事前に消した」

父さん以外にビーナスの盗難を知っていたのは、おそらく木村と言う人だけだろう。でも、それだともっと有り得ない気がした。木村と言う人のことはよく知らないものの、父さんによると、最初から他の研究員を疑い、一人一人尋問して、持ち物検査をすべきだと主張したそうだ。そんな人が、自分を危険に晒して、父さんを守るようなことをするだろうか。


「まあ、考えても仕方がない。おそらくこれ以上悪くはならないよ。まあ、僕の勘だけどね」

最後に水野さんが言った。

「おばけ捜査官、最初のミッション。無事終了。と、その前に。」

水野さんが取り出したのは、例の黒い手帳だった。

「君も、今日から、お化け捜査官」

手帳を開くと、いつの間に、撮ったのか、サユリの写真が貼られていた。

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