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第一話 予兆

前作お化け捜査官の父親達の世代の物語。


 その丘は、巨大なブルドーザーによって、今まさに、切り崩されようとしていた。数年後には、ここに新しい小学校が開校する。

 穏やかな春の日差しの中で、作業服を着た数人の男達が、忙しそうに動き回っていた。その中の一人がふと、足を止めた。足元に、何か光るものを見たような気がしたのだ。拾い上げてみると、それは、黒く輝く、小さなガラスの破片だった。

 コーラのビンのかけらかな。男は考えた。

 しかし、こんな場所にコーラのビンがあるだろうか。小学校の建設予定地とはいえ、数日前まで、草木に覆われていたこの場所に、人が出入りしていたとは思えなかった。

 まさかとは思うが、産業廃棄物の不法投棄なんてことはないだろうな。その男の脳裏にそんな言葉が過った。そんなわけで、黒いガラスの破片は現場監督の元へと運ばれた。


 その時の現場監督は、たまたま、縄文時代の遺跡に精通していた。彼は、一目見た瞬間に、それが黒曜石であることに気づいた。しかも、加工されている。おそらく、これは矢尻だ。

 こうして、数日後には、日本中を騒然とさせることになる、遺跡が発見された。

 工事がいったん中断され、遺跡の発掘が開始されると、考古学者から驚嘆の声があがった。その遺跡は、研究者達の予想をはるかに超えて、かなり広範囲に広がっていた。小学校の建設予定地だけでなく、周囲の畑からも、大量の遺物が発見された。

 実は、周辺の農家の人たちは、自分の畑から、ゴロゴロと土器や、黒曜石のかけらが出てくることには気づいていた。しかし、それがあまりにも日常的に過ぎていたため、その重要性に気づくことはなく、それまでは誰も本格的に調査しようとは思わなかった。

 しかし、遺跡中央部から、二体の土偶が発見されるにいたると、研究者達の興奮は最高潮に達した。それは、まぎれもなく国宝に指定されるであろう、大発見だった。

 こと、ここに至り、小学校の建設はいったん白紙に戻され、徹底的な学術調査が始まり、保存も検討されることになったのである。


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