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八章 渺茫《びょうぼう》の大地
涙はもう枯れた。
カガミは、己の目の前にいる者たちを見据えた。
ともに苦難の道を歩む覚悟を誓い合った隻眼の従者は、カガミに対して双剣を構えている。
全てを思い出した最愛の妹は、従者の後ろで虚ろな目をしている。
「……殺させません」
「ヤサカニ」
名を呼べば、従者の肩がびくりと震えた。
カガミは自分の声が酷く冷えているのに気付きながらも言葉を続けた。
「姫巫は、いてはいけない」
ヤサカニは、カガミの発言に果敢にも立ち向かってきた。
「わかっています、わかっていますとも」
意外なヤサカニの返答にカガミは心底驚いた。ヤサカニはきつく眦を上げて叫んだ。
「そんなこと、貴方に言われなくともわかっている! だが、畏まりましたと言えるほど、俺は出来た人間ではありません!」
ヤサカニの頬に一筋の涙が走る。
カガミの構えが一瞬解ける。
隻眼の従者は震える声で言った。
「俺は、姫巫を愛してしまった」
炎が空高く舞い上がった。
「――だから、貴方を殺します」
そう決然と言い放った彼は、カガミが今まで見てきた誰よりも覇気を宿していた。