表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/60

序章 姫巫《ひめみこ》

 割れ鐘のような響きが脳内に広がる。

 少女は口許を押さえてその場に倒れ込んだ。

 意識が朦朧もうろうとする。

 睡魔に負けまいと下唇を噛みしめたものの、抗い難い眠気は彼女を侵蝕し、瞼を閉ざす。

「――姫巫ひめみこ。いずれこの国の行く末を握ることとなる運命の子供。今は夢に遊ぶがいいさ。いずれ定めの刻は来るよ、わたくしの後裔」

 遠い意識の淵で、少女は声を聞いた。

 酷く冷えた、氷のような女の声。

 しかし、どこか憐憫も含んでいる声でもあった。

「触れるな」

 低く、地表を這う声がした。

「誰が貴様如きに渡すものか。こいつは姫巫にはならん。即刻立ち去るがいい」

 女に向かって誰かが言う。

 怒気を含んだその言の葉は温かな言霊となり、少女の護りとなる。

「無駄だよ。もう抗うことさえ赦されていない、わたくしたち青草には、ね」

 女は感情の立ち消えた声でなおも言い紡ぐ。

 もう一つの声はそれを鼻で笑った。

ゆるし、と。誰に赦しを乞うと言うのか。神にならば、もう既に赦されようとも思ってはいない」

 轟音がした。

 何かが大きな音を立てて崩れていく。

 少女は夢と現の狭間で、浮遊していた。

 最早、何の音さえ聞こえない。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ