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 公安部第一課第十二班室。クラウデンはサンリからの連絡を受け取ると、デルタにもそれを共有した。


「今日も定例報告に挙げる内容が増えたよ」

「コルジくんですものねぇ」


 ふふふ、うふふ、とふたりは笑いあう。


 第一課第十二班の班長に課せられた特殊な業務の一つは、「稀少神聖種・エンジェリア(保護種)活動報告」である。

 エンジェリアは、一般常識がまるで通用しない超常的な存在である。数十人いることは確認されているが、そのほとんどは文字通り雲の上で生活しており、一般市民にとってはお伽噺の中の存在であり、実在を知らないものも多い。たまに街に降りてきても、大概鳥人と間違えられている。衣服も既製品は鳥人用を着ることが多いため、コルジも街ではそう思われている。彼らは息をするように超常現象や奇跡を起こすので、保護というのもエンジェリア自体を保護する意味合いと、他の種族を混乱から保護する意味合いがある。


 そんな稀少で神聖で保護対象のエンジェリアが、数年前に公安部を受験、しかも合格したときは、それはもう大混乱であった。公安部らしく静かに大混乱であった。合格者たるコルジエル・コア・コーネリウスはアホだが成績は非常に優秀であった。アホだが。そのため誠に遺憾だが、成績順で言えば第一課が相当であったのだ。危険を伴う課である。苦肉の策で、ほぼ機能していない十二班に所属させることとなる。


 そして、そもそも、第一課第一班でもかなり優秀な人材であったクラウデンが、この僻地というべき班で班長をしているのも、保護種であるエンジェリアになにかあってはいけないということで、お守り役のような意味で任命されたからだ。もっとも、今は「なにかあってはいけない」ではなく、「なにかやらかしてはいけない」というお目付け役としての機能のほうが期待されている。


「まあ、コルジくんがのびのび過ごしてくれるのが一番だね。若者はそうでなくちゃ」

「そうですねぇ。いいコですしねぇ」


 アホだが。

 ふたりはなんとはなしに同時に窓の外を見た。


 数年前、成績を考慮せず、保護の観点から第十二課第十二班緑化担当への配属を検討されていたコルジが、お手伝いで水を上げた中庭の双葉の苗。「大きくなぁれ!」と無邪気に祈られ一夜にして建物を超える巨大樹となり、すっかり街の観光名物となったそれが、誇らしげにそびえたっていた。


(END)


二話はそのうち……

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