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本日二本目の更新です

「ここだな!」

「違います先輩、その先っす」

「うむ!」


 資料を基に、コルジとサンリは現場に来ていた。日の当たらない、人気のない路地裏だ。古い建物に挟まれたそこから、饐えた匂いが漂ってくる。


「今回のおばけさんはヒューム型だったか」

「っす。なんかヒューム型多いっすよね」

「だな。とりあえず行こう!」


 コルジは足を踏み出した。当然のように建物と建物の間に翼が引っ掛かった。


「はい先輩、翼畳んでー」

「うっかり! ではお邪魔します!」


 できる限り翼を畳むと、もう一度足を踏み出した。

 その途端、路地裏の空気は清浄なものとなる。臭いは消え、心なしか明るくなったようにさえ感じられる。


「いませんね~? また気のせいとか見間違いじゃねえのかな」


 だが、それを気にする様子もなくふたりは進む。


「む? 人を疑っちゃいけないぞ」

「先輩、俺たちの仕事知ってます? 人を疑うんすよ?」

「おじい様が言っていた。人を信じるものが人に信じられると!」

「ありがたいお言葉っすね~。……おっと」

 

 コルジのホルターネック(有翼人種はこの手の服を着ることが多い)を掴み、サンリは横道の前で足を止めた。


「いました」


 視線の先には、


『憎い……苦しい……ここは何処……嫌だ……憎い……』


 苦悶に満ちた表情で、怨嗟の声を上げるナニカがいた。

 通常であれば大騒ぎになるところだが、生憎このふたりは慣れっこである。


「すごく……透けているな!」

「っすね。じゃあ先輩、頼んます」

「応!」


 コルジはナニカに近づいた。己に近づく言いようのない気配を感じ、ナニカは顔を向ける。


『!? お……おぉ……!!』

「俺は公安のコルジエルだ! どうした! 何か困っているのか!」


 コルジの姿を目の当たりにし、ナニカは膝から崩れ落ちた。顔から苦悶は消え、涙を流している。コルジにむかって、震える両の掌を合わせ、拝む。


『天使様……!』

「テンシ? 誰か知らんが、俺はコルジエルだ!」


 堂々ともう一度名乗るが、ナニカは益々合わせた両手を掲げ、咽び泣く。


『あぁ、あぁ……! 初めてだ、こんな、こんな幸運……! ()使いが来てくださった……!』


 ナニカはしあわせそうな吐息(多分、実際には呼吸していないが)とともに、煌びやかな光の粒子となって空へ昇って行った。


 その場にはなにも残らなかった。


 それで終わってしまった。


「ん? よくわからんが、解決したようだ。よかった!」

「そっすねぇ。ジョーブツってやつっすかねぇ」


 適当に返事をしながら、サンリはクラウデンに捜査終了の連絡を入れるため通信端末を取り出した。


「ここちょっと暗いな……そうだ先輩、あれ出してくださいよ、あれ。明るいやつ」

「うむ!」


 コルジは頼られて嬉しいので、輝かんばかりの素敵な笑顔で返事をすると同時に、本当に笑顔が輝いた。


 コルジの頭上に、明るい光の環が生じたためである。


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