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本来、公安部第一課は、一等級刑罰(無期・死刑・永久封印)にあたる罪を担当する課である。
なお、第二課は二等級刑罰(各種族別平均寿命半分以上の有期懲役・禁錮)、第三課は三等級刑罰(二等級刑罰に満たない程度の有期懲役・禁錮、罰金等、比較的軽微な処罰)である。コルジは公安部職員試験に合格した当初、上層部に第十二課第十二班の緑化担当(施設内の植物お世話係)に任命するかどうか真剣に検討されていたというのは秘密であるし、研修期間にお試しでやらせてみたら盛大にやらかしたのも秘密を通り越して伝説である。
閑話休題。
重大事件を日々捜査する第一課において、そこに属する零室は、かなり異端であった。その存在すら、市民どころか職員の中でさえ知らないものが多い。
零室が担当するのは、科学捜査で解明できない奇妙な事件、所謂霊障事件である。業務内容と「公安部の零室」をもじって、「霊安室」と呼ぶ職員たちもいる。
心霊どころか神聖種の存在すら信じないものも多い中、それでも実際に起こっていることは仕方がないので、ひっそりと設立された部署である。そもそも適性があるものが少ない。見える・祓える人材というのは本当に稀有なのだ。
最初の職員は、元第一課第一班所属、ダライアウツ・ダンバー・ダインという男である。種族不明の存在に対して塩を投げつけるという、冗談みたいな対処方法で霊障事件を解決してしまったため、名誉ある初代室長に任命された。
が、彼は能力は高いが悪い意味で適当な男で、なにか理由を見つけてはふらふらと出張という名の旅行に出かけてしまう悪癖がある。そのため、フットワークの重い室長という役職を返上すべく、街で八百屋の店番をしていた女性……レイコ・レインが霊能力者であることを見破り、彼女をあの手この手でスカウトして室長に任命し、自分は平職員としてふらふらし放題なのだ。いいご身分だ。
案件は、他の課や班で調査した後に「これは怪奇現象」と判断されたものが回されてくる。零室は故に、捜査よりお祓いが専門のようなものだ。その独自性のため、回されてきた以降の他の部署との連携などは難しいはずなのだが……第一課第十二班は、しょっちゅうお手伝いという名の、代理をしている。それには理由があった。
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