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(3)

 劇場へ向かうと、コルジはアニーに教えてもらったロビーのシャンデリアを真っ先に見に行った。


「わぁ! ほらサンリ、きれいだぞ! きらきらしている!」

「そっすねー」


 確かにキラキラと輝いて綺麗だが、目の前ではしゃがれると一緒になってはしゃぐのも恥ずかしい。ちょっと素っ気なく同意しておく。


「あと、向こうの出入り口にステンドグラスがあるらしいんだ! 見に行こう!」

「はいはい」

「それから客席の二階の一番後ろのおばけさんにも会いに行こう!」

「は……え?」


 なにかあまりよろしくないことを言っていたが、ステンドグラスのほうへ進むコルジを追いかける。初めて来る場所でテンションがアガっている。手を繋いでおけばよかった。


「あった! わぁ……きれいだな!」

「そっすねぇ……」


 小ぶりながら、なかなか見事なステンドグラスがあった。これは穴場かもしれない。いつかデートのときにちょっといい顔できるかもしれない。


「あれ? お~、コルジに、サンリ! そっちもデート?」


 そこに、見知った顔が。ガイ・ガードナーである。髪も服もビシっと上品に決めて、ほっそりとした美しい狐の獣人の女性と腕を組んでいる。

 これは正しいデートの姿だ。


「デートじゃないです。断じてないです」

「あ、ガイ先輩こんばんは! お連れの方も初めまして! コルジエルです!」


 女性はにこりと笑い、コルジと挨拶を交わしている。コルジも何やらきちんと受け答えをしている。ふたりでステンドグラスに近寄ってあれこれおしゃべりを始めた。その間に男たちはひそひそと話し合う。


「……え、ふたりで演奏会に遊びに来たの? 趣味いいね?」

「いや、あの、ふたりともシマヅ先輩に招待券をもらったんで……」

「なるほどねー。それなら納得。あいつ趣味いいもん」

「悪かったっすね、俺は趣味悪くて」

「あはは! 悪くはないよ。……若いだけで」


 悪戯っぽく小首をかしげながらウィンクをされてしまった。悔しいが大人の色気だ。サンリは、ぐぬぬ、となりながらも心のメモ帖にがっつり書き込んでおく。こういう仕草が似合う男になりたい!

 なお、ガイもまだまだ若造を自認しているのだが、サンリをからかって遊んでいるだけだ。そこんところは実はこどもっぽいのだが、サンリがそれを理解できるようになるのはまだまだ先だろう。

 ……余談だが、シキはなんというか、若いのに老成気味だ。無自覚だが。もうちょっと年齢相応にはしゃいでもいいと思う。

 閑話休題。


「まあ、サンリにはいい予行練習になるかも? デートのさ!」

「っ」


 正に実地調査とは言えず、サンリは言葉に詰まる。ガイはにやにやして更に追撃しようとしたが、コルジと本日のパートナーが話に戻ってきた。


「ココさんからステンドグラスの歴史についてとてもためになるお話を聞いた! 後でサンリにも教えてあげるからな!」


 そんなことまでお話してもらっていたらしい。ココと呼ばれた女性はにこにこと手を振って、またガイと腕を組む。ガイはココとアイコンタクトをして、絶対に同性には向けない微笑みを見せると、劇場のホールのほうへ足を向ける。


「じゃあ、またねー」

「はい! また!」


 ふたりを見送って、コルジは元気に手を振り、サンリは敗北感に打ちひしがれるのであった。

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