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(2)

 街に来る機会は、任務以外ではあまりない。コルジはシキやガイに連れられてカフェに行ったり、たまに家族にお菓子を買って帰るときに寄るくらいだし、サンリは日用品や衣料品、勉強用の本の買い物だったりで行くくらいだ。また、サギリが来たときには三人でいっしょに遊ぶこともある。


「カフェでちょっとのんびりするとしても、演奏会まで結構時間あるっすねぇ。どっか寄りますか」

「うむ、本屋さんに行ってみたい! この前班長にいただいた絵本は、シリーズものらしいんだ。続きを読みたい!」

「了解。俺も参考書買うかな……」


 ふたりはちょうど近くにあった大きな本屋に入った。品揃えという意味でも物理的な意味でも大きな本屋だ。広々として天井も高く、翼のかさばる有翼種や、身体の大きな獣人にもありがたい。


「絵本は一階っすね。俺は専門書……五階か」

「うむ! 後で俺もそちらに行こう」

「あ、はい」


 どうせ絵本に夢中で遅くなるだろうな、とサンリは思いつつ、それぞれ別れた。既にデートの下見っぽくはない気もする。


「お待たせ!」


 数分後、予想は外れ、コルジは五階にやってきていた。勢いは良いが小声でサンリに呼びかける。目的のものは既に買った後のようで、胸に包装済みの絵本を抱いている。


「あれ? 早かったすね?」

「うむ、すぐに見つかった! うっかり次のを読んでしまわないように、すぐ売り場を離れた!」


 全力でシリーズを楽しむ気のようだ。


「サンリは何を探している?」

「あー、公安法の参考書っす。捜査規則とか」

「なら……あった! このシリーズがおすすめだ。基本法の条文解説に関連規則や過去の判例が事例付きで載っていて、具体的に把握しやすい」

「……どうも」


 こういうとこは本当に優秀な先輩なんだなあ、と不思議かつ納得いかない気分ではあるが、薦めて貰った本は確かに良さそうだ。

 先輩らしいことができて嬉しいコルジが、えっへんと胸を張る横で、サンリはそのシリーズを二冊買った。

 なるほど、いつか素敵なレディと本屋でお薦めの本を紹介し合うのも良いデートになるかもしれない。読んだ後に感想を言うということで、次にも繋げそうだ。よし。


 貪欲かつ無駄に将来のデートプランの参考にしつつ、サンリはコルジの手を引いて本屋を後にした。次はカフェだ。





 シキが選んだカフェは流石である。以前コルジに付き合ってサギリと三人で来たことがあるが、今日も賑わっている。雰囲気も良いし、接客も気持ち良い。翼の大きなコルジをさっと広い個室に案内してくれる。……密かに店員の中で、この美しくかわいらしい常連さんは大人気であるが、本人の前では必要以上の愛想を振りまいたり、贔屓したりはしない。優秀な店員たちだ。


「今日は、うーむ、この『はちみつたっぷりホットレモネード』にしてみよう! ケーキは……これ!」

「はいはい、じゃあ店員さん呼びますねー」


 コルジがたっぷり悩んでいる間にサンリはさくっと決めていた。店員を呼んで注文を済ませると、うきうきバサバサとしている先輩を眺める。見た目だけはいい。翼はともかく、きちんと姿勢よく座って、足をバタバタさせたりはしない辺りに育ちの良さも垣間見られる。……エンジェリアっていうよりも、この性格と見た目と育ちのアンバランスが不思議だなぁ、と思う。


「そういえば、サンリは劇場に行ったことあるのか?」

「一回だけ。思いっきり小さいころに、おめかしさせられて来たことがあるみたいですけど、正直覚えてないんすよね。そんときはこども向けの演奏会で、途中で寝たみたいです」

「ふふ! かわいらしいな!」

「……」


 なんとなくこどもにこども扱いされたようで、悔しくなっちゃうサンリである。というか、職場でお昼寝タイムが設けられているやつに言われたくないのである。


 やがてケーキと飲み物が運ばれてきた。サンリは、ブラックコーヒーはともかく、ナッツのタルトをキラキラした目で見られて、仕方なく半分こしてあげることにした。コルジからも半分こを申し出られたのだが、クリームたっぷりのフルーツケーキは遠慮した。サンリはあまり甘いものが得意ではないのだ。


 食べながらあれこれ他愛無い話をしていると、程よい時間になった。なんとコルジが先輩風を吹かせて、飲み物を奢った。いつもシキやガイにしてもらっててちょっと憧れたのである。先輩なのである!


この幕間、無駄に長くなりそうな気配。

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