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(2)

「た、助かる〜〜〜!! ありがとうコルジくん、サンリくん!!」


 五課は確かに朝からてんやわんやだった。手伝いに来た旨を伝えると、顔見知りのサコン・ササハラが、上の両手でコルジの、下の両手でサンリの手を掴んでぶんぶんと振った。今日も角がかっこいい。


「飛行種もそれ以外も本当に人が足りなくて……! あ、これ、お願い! 宛先は付いてるタグに書いてあるから、よろしくね! 新年のご挨拶と防犯への注意を添えてね!」

「うむ! わかった!」

「了解っす」


 それぞれ手提げ袋いっぱいのカレンダーを受け取る。コルジは飛んで行くのが便利な場所宛て、サンリは普通に陸路で届けられる分だ。


「あ、これ、サギリくんの大学用だな! この前飛んで行ったし、中も案内してもらったから大丈夫だ!」

「いいな……! 俺は入学式のときに無理やりついていったっきりですよ……! 俺だってサギリに案内してもらいたい……!」

「いっしょに行くか? 俺が案内するぞ!」

「いや、サギリいないんでいいっす」

「そうか!」


 現在、大学は冬眠休暇中なので、職員が少数いるくらいだ。サギリくんも休暇中である。

 とりあえず受け取ったカレンダーの宛先を確認して、遠くの分から並べて順路を組み立てていく。


「よし、じゃあ行くか! 行ってきます! サンリもいってらっしゃい!」

「っす。お気をつけて。いろんな意味で」


 配達業務が始まった。





 サンリは割と足の速いほうに属するが、あくまで瞬発的な速さだ。配達にはあまり向いていないようにも思われるが、柴犬の血が騒ぐのか、散歩は大好きである。そのため、今回の配達業務も結構楽しんでやっている。風景を見ながらあちこち行くのは胸が躍る。


「はい、では今年もよろしくお願いします。この時期は特にスリや火の始末に気を付けてくださいね」


 特に愛想がいいわけでもないが、そつなくこなしていく。相手が好みの女性だとやたらと愛想がよくなるのが残念だ。


「ええと、次は……あれ、もう終わりか」


 そんなこんなで昼前には十数件の配達をこなした。追加分をもらおうと、一旦本部に戻ることにしたそのとき……


「泥棒ー! 捕まえてー!」


 女性の叫び声。反射的に振り向くと、遠くに倒れて上半身のみを起こしている女性と、不釣り合いにかわいらしいバッグを胸に抱えて走る怪しい男……


「よっ、と。はいはい、公安です。ちょっと止まってください」


 サンリは男の目の前に走りこむと、軽く腕に触れて円の動きでその身体の勢いを利用し、やわらかく地面に転がすように確保した。相手にしたら突然天地がひっくり返り、何をされたか把握できていないようだ。


「はい、ちょっとそのバッグ見せてもらっていいっすかー? ……この身分証明書の写真、あなたじゃないですねー、あっちの女性ですねー。確保」


 装備品の手錠(全種族対応型の縄もあるが、今回は相手の手足がヒュームに近いかたちをしているのでこちら)で拘束。事件処理もあるので、応援を呼ぶべくこれも装備品の特殊な笛を吹いた。公安にいるニコラス・ニコロス(彼はコウモリの獣人だが、冬眠の獣性が弱いようで、普通に出勤している)のような職員が聞き取って、場所を各所に連絡したり、直接きたりしてくれるだろう。


「あ、あの! ありがとうございます!」


 倒れていた女性がやってきた。ヤマネの獣人だろうか。少し足を引きずっている。擦りむいて怪我をしているようだ。ああ、強盗致傷になったな、一課か二課の担当案件になるかな、と考えるが、それ以上に綺麗な女性だったのでときめきのほうが強い。


「いいえ! 公安職員として当然のことをしたまでです! お怪我されてますね!? 救急に連絡を入れましょうか!?」

「え、ええと、大したことは……」

「いいえ! 美しいおみ足に傷が残ったら大変です!! あ、ていうか、診断書が必要になるので! うん!」

「は、はい……」

「あ、それと申し訳ないんですが、別の職員が来たら盗られたお荷物の記録を行いますので、少しだけ返却をお待ちくださいね。あと、後日調書のためにちょっとお時間いただくことになると思うので、ご連絡先を……いや、これホントに必要なんで下心とかじゃないんでご連絡先を……!」

「は、はぁ……」


 女性はちょっとだけ、「この人、泥棒を捕まえてるときはかっこよかったのになぁ……」と残念に思っちゃうのだった。


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