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第十八話 お届けものをしよう! (1)

新年忙しいです!!フーゥ!!

(※更新速度かなり落ちてます)

 コルジは有言実行のエンジェリアである。

 有言すぎるので少しくらいは黙ってくれればいいのにと思うサンリもいるが、仕方ない。コルジだから。


 というわけで、


「おはようございます! コルジエルです! ケーキ持ってきました!」


 年が明けてから数日経ったある日。年始はケーキを食べよう、と言った通り、職場にケーキを持ってきたコルジである。


「おはよう、コルジくん。ケーキなの? 大きな箱ねぇ~! 今日のおやつにしましょうねぇ」

「はい! 家の使用人のみんなが、張り切って作ってくれました!」

「っす。持ってきたんすね……」

「うむ! いくら嬉しくても振り回したらぐちゃぐちゃになると学んだからな、大事に大事に持ってきた!」

「学んだってことは、やったんだ……」


 とりあえずデルタがケーキを受け取ったところで、クラウデンもやってきた。


「おはよう、みんな。お、ケーキかい?」

「はい! 持ってきました! おはようございます!」

「嬉しいね、おやつの時間が楽しみだ」


 普通に「おやつの時間」があることが当たり前になってしまっているが、他の部署ではそうはいかない。が、仕方ない。コルジがいるから。あとお昼寝の時間もあるが仕方ない。コルジだから。

 とりあえず朝礼と「気安くクラウデンと……」を済ませ、今日も一日が始まる。


「なあサンリ。シキさんの、ええと、オセチと、オゾウニと、おしるこ、おいしかったな!」

「そっすね! なかなか手が込んでて豪勢っしたね~。おしるこも、先輩の分残っててよかったっすね」

「うむ! また食べたい!」


 まだ新年気分が抜けないコルジは、新年初日の朝、公安本部内で当番のみんなで食べた、豪勢な朝食が忘れられないし、何度も思い出してしまう。オセチとオゾウニというシキの故郷の郷土料理も素晴らしかった。本人は急ごしらえで申し訳ないと言っていたが、色とりどりで、料理のひとつひとつが縁起が良いとされるものらしく、なんだかめでたい気持ちになった一同である。


「あと、先日オトシダマというのをもらったな!」

「俺ももらいましたね、なんか」


 そう、シキはこのふたりにお年玉を渡した。とはいっても、流石に現金を渡すのはどうかと思ったようで、ポチ袋におすすめのカフェのケーキ無料券や、街の劇場で行われる演奏会の招待券などを入れてくれていた。一日中デートできそうなチョイスだが、無自覚である。なお、八課のガイは狙ってそういうものを女子に二人分渡す。自覚の有無は抜きにしても、モテ男のチョイスは似てしまうものなのかなぁなどとサンリは思っている。


「あら、ふたりとも良かったわねぇ。少し遅いけど、私からもプレゼントがあるわよぉ?」

「奇遇だね、僕からもだ」


 デルタとクラウデンがにこにこと何か持ってきた。デルタからは、ちょっとお高めの香りのよい紅茶と焼き菓子、クラウデンからはコルジに絵本、サンリに公安御用達の法律参考書だ。


「わぁ! ありがとうございます!」

「え!? あ、ありがとうございます!」


 なんだか職場で俺まで甘やかされてないか!? と思っちゃうサンリだが、大人たちの、若い後輩をかわいがりたい気持ちと、労りの気持ちによるところが大きい。本当に、お疲れ様なのである。


「去年は本当に色々とがんばったからね、ふたりとも」

「本当にねぇ……」


 ちょっと遠い目もしちゃう大人たち。


「がんばったし、楽しかったです! 今年は他の課のお手伝いもできれば嬉しいです!」

「え、勘弁してください」


 絶対大変になるやつ。サンリとしては、コルジがお手伝いに行く場合に高確率で付き添いで行くことになるので、本当に勘弁してほしい。普通のお手伝いなら見聞を広めたり実力を高めるために大歓迎なのだが、このアホといっしょだと無駄に厄介なことになりがちだ。


「そういえば、班長やデルタ先輩は年末年始のお祝いとかしましたか?」


 コルジはそんなサンリの気持ちはいざ知らず、大好きな先輩たちに話を振っている。


「うん、友達と忘年会兼新年会したよ。まあ、飲み食いするだけだけどね!」

「私は家族とちょっとしたご馳走を食べて、ゆっくり過ごしたわねぇ。コルジくんはなにかしたの?」

「はい! 俺もデルタ先輩みたいに、家じゅうのみんなでいつもより豪華なごはんを食べて、静かに過ごしました! 使用人のみんなもいっしょにごはんを食べてくれるのはこのときくらいなので、嬉しかったです!」

「あらぁ、そうなのねぇ」

「エンジェリアの習わしかい?」

「いいえ、おじい様が始めた、我が家独自の形式らしいです!」

「あ、そっか……神聖種って、公国共通のこよみとか気にしてないのがほとんどって聞いたことあるっすね」

「うむ。親戚でも気にしていないところが多い。そういうところは、使用人もあまり雇っていないしな」


 地域や種族によっては独自の暦を使っていることも多い。そのため公国は、建国時に共通かつ標準の暦を定めた。一年の始まりを一の月、といった風に数え、十二の月まで。

 しかし、種族と関わりを持つことが少なく、しかも永いときを生きるエンジェリアや竜種といった神聖種たちにとって、いわば「下界」のひとびとの時間の流れは無意味だ。

 他種族と積極的に交流し、他種族の使用人を多く雇い、年末年始のお祝いのようなことまでするコルジのコーネリウス家は、異例中の異例といえよう。

 ……余談だが、ダライアウツとその母がこの世界に来た当初、公国は建国期だったが、言葉だけでも苦労するというのに、暦までバラバラなことに、自分たちの異様さがバレずに済む反面、「本当に勘弁してくれ」と血涙を流す勢いだったという。ほどなく浸透した標準暦が自分たちの知っている「一年十二か月三百六十五日」だったこと(閏年はないが、そんなことは些事だ)には、喜びで号泣したともいう。

 閑話休題。


「あ、そうだ。暦で思い出したけど、コルジくん、サンリくん。今日は五課のお手伝いに行ってみないかい?」

「! 行きます!」

「いいすけど……暦?」

「ああ、うん。公安作成の防犯防災カレンダーをね、挨拶と注意喚起がてら各所にお届けするらしいんだ。いつもは年末にやるらしいんだけど、人手が足りなかったからね……」


 年末は予定外に広域誘拐組織を潰したな、と思い出す面々である。


「てんやわんやしてるみたいだから、行ってみて」

「はい! 行ってきます!」


 元気よくお返事して、コルジは颯爽と五課へ飛び立……とうとして、サンリにホルターネックの襟首を掴まれた。陸路で行こう。


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