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(4)

 コルジ(幼)はあまりにかわいすぎた。はじめてのおとり、それを見守るスタッフが多すぎる。サコン以外は自主的に(つまり、勝手に)ついてきた。


「……」


 屋上に寝そべってスコープから見守るデルタは真剣だし、


「かわいいなぁ~。僕もこどものころはかわいかったけどね? あ、今もね?」


 その横でにこにこと双眼鏡で見守るクラウデンは楽しそうだ。

 ちなみに、何かの直感というかなんというかでコルジを見つけ、遥か上空で旋回するオオハクチョウの鳥人がいるのは多分気のせいではない。

 なお、サンリは公安本部庁舎内で普通に自分の仕事をしている。


 コルジが歩いている場所の、あまり多くない通行人たちにも、どよめきが起こっている。そこの通りだけ二度見三度見が当たり前になっていた。

 

(……これ、逆に犯人側も接触しづらくない……?)


 ちゃんと正規の任務中のサコンは、気付いてしまった。コルジは注目されすぎている。近づきづらいのでは……と心配するが、杞憂に終わった。


「……坊や。ひとりかい?」


 接近するものが、あった。




 彼には娘がいた。彼と当時の妻と同じ、オランウータンの獣人だった。

 その子は五歳で、病に倒れた。重要な臓器の病だったが、移植が間に合えば助かる命だった。

 だが……オランウータンの獣人の純血種、かつ、条件に合うドナーは、見つからなかった。


 そこから彼は荒んで、歪んでしまった。間に合わなくて哀しむ人間が多いのなら、間に合わせればいいのだ。彼は移植のための誘拐組織に傾倒した。誘拐された側の気持ちを慮るような正常な判断能力は、とっくに失われていたのだ。


 今日も、自分の娘と同じくらいの年頃の、純血種らしいこども(えもの)を探していた。そこに現れたのは……驚くほど愛らしい、真っ白な翼の鳥人のこどもだった。


「……坊や。ひとりかい?」


 声をかけると、そのちいさなこどもは心が浄化されるような笑顔で頷いた。


「はい! ひとりで歩いています! おじさんはひとりですか!」


 高くかわいらしい声も、荒んだ心を癒すような……


 彼は気付いていなかった。


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「……おぉ……」


 彼はよたよたとそのこどもに歩み寄った。目の前で膝から崩れ落ちる。


「! どうしました!? 具合が悪いんですか!?」

「ちがう、ちがうよ……ごめんよ、おじさんは、悪い人間なんだ……」


 急に目の前の霧が晴れたような彼の手を、小さくやわらかな両手が包み込み、


「悪い人は自分を悪い人って言いません! 元気を出してください!」


 彼のために祈ってくれた。


「おぉ……!!」


 当然、元気が出るのである。


「こ……このコは俺が守る!!!!」


 元気を出したおじさんは、清々しい顔で立ち上がった。憑き物が落ちたようだ。

 あとなんか、赤い雫も空から数滴落ちてきたような気がするが、きっと気のせいだ。


「なんと! ご親切にありがとうございます!」

「ああ。……誰かー! 公安を呼んでくれー!」

「わ、わー! こんにちは! 偶然非番の公安職員です! どうされましたかー!」


 叫ぶおじさんに、サコンが駆け寄る。なんだか予想外のことが起きている!


「俺はこの近くを拠点にしている組織の構成員だ! 案内するから、そこに拘束されているこどもたちを助けてくれ! みんな誘拐してきたんだ! あと、組織を潰してくれ! 俺も逮捕してくれ! このコを守ってくれ!」

「え、えぇ!? あ、はい!?」


 あまりの急展開に黒のつぶらな複眼をきょろきょろさせながらも、サコンはきちんと笛を吹いた。


「……ノーマーシー班長、笛です。これは……ササハラとコーネリウスのコンビですね。東の裏通り、中央広場から三本目の路地です」


 笛の音を聞き取ったニコラス・ニコロスの言葉で、ノースはテンション高く吠えた。


「よっしゃあああ!! 行くぜ野郎ども!! ニコラス、周りの奴らを呼び集めておいてくれ!」

「了解」


 斯くして、予想外かつ予想以上に、拠点の制圧と被害者の救出がなされたのであった。


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