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 ごきげんよう、ローゼル・ローゼンブラッドでございます。みなさまはいかがお過ごしでしょうか。わたくし? わたくしめは只今、全国各地の知り合いに手紙をしたためているところでございます。


 先日、コルジエル様がご自宅でお久しぶりに外見年齢の操作を解除なさいました。そう……!! この世のものとは思えないほどの愛らしきあのお姿……!! わたくしめは未熟ですので、その際眼鏡を筆頭にいろいろ砕けてしまいましたが、何故お姿を戻されたのかお尋ねしました。その際仰ったのです、「今度任務で……いや、ないしょだ!」と。


 わたくしは愚考いたします。公明正大でお心美しくあらせられるコルジエル様は、受験資格の年齢要件をお気にされて、立派なこの上なく美しい青年のお姿で公安職員の任に当たられています。そのコルジエル様が、「任務」であの至上の愛らしを持つお姿を披露される機会がある……これはもしや、最近多発しているという誘拐事件の囮捜査なのでは、と……!

 汚らわしい犯罪者どもの前にあのお姿を晒し、なおかつ、手を触れられたりでもしたら……! 考えただけで拳を握りすぎ、かつ、唇を嚙み締めすぎて、手と口から赤い水が出ました。あと目からも。


 とはいえ、尊いお志をお持ちのコルジエル様は御自ら前線に立たれることでしょう。わたくしめができることといえば……そう、知り合いたちに頼んで、万が一にもコルジエル様に危害が及ばぬように配慮すること……では、ありません!! また目から赤い水が出ますが!! それはコルジエル様のお志を妨げてしまいかねません!! ので!! 誘拐犯、おそらくグループであるそやつらを殲滅するお手伝いでございます!! ひいてはそれがコルジエル様のご安全にも、お志にも沿うことでしょう!!


 書き終えた数十通の手紙を、これから配達して参ります。ええ、飛ぶのは得意ですからね、自分で配達したほうが速いのですよ。

 ちなみに、既に配達した分も数十通ございます。わたくし、執事としての業務や、趣味や実益の狩猟等の関係で、多くの業界の知り合いがおりますので、入ってくる情報もそれなりのものになります。食品業界、運送業界、教育関係……彼らの情報は広範かつ密に及び、非常にありがたいものです。

 それによると、誘拐の多発している地域はやや下流家庭の多い地域で、被害者は就学前から初等科中学年くらいまでのこどもたちが多数を占めます。外見上、他種族と混じっていない、いわば純血と思われる獣人や鳥人が狙われています。おそらく臓器が目的でしょう。……最近は混血のひとも多く、彼らは多種多様な種族からの提供を受けられますが、純血はそうはいきませんので。しかしそれでこどもたちを犠牲にするなど……忌々しい。

 それで病院関係者にも協力を募りましたところ、結構な情報を得られました。最近、妙に移植手術、それも極秘扱いで行われているものが多い病院があると。組織は隠しても、携わる関係者が多ければ、綻びは生まれるものでございます。ふふ。


 そういうわけで、組織の拠点であろう場所にはあたりをつけました。公安で把握している情報に近いのではないかと自負いたします。これで……コルジエル様のために! 働けます!!





 執事が独自の伝手を活用しているのと()()()()()()()、公安の捜査に進展があった。()()()各所から匿名の情報提供が相次ぎ、誘拐犯グループの拠点の地域が、ある程度絞り込めたのだ。市民の皆様のご協力に感謝を。

 進展があったおかげで、冬眠休暇中の職員たちの復帰を待つまでもなく、囮捜査を開始することになった。


「えー、そんじゃまァ、この辺りを中心に囮役には散ってもらう。相棒は一定の距離から見守って、目標が接近したら『笛』で合図を送れ。ニコラス、合図がきたらヨロシクな。じゃあ、散開!」

「了解!」


 ノースの確認事項に、みなが控えめの声量で応える。小さいコルジもなるべく小さい声でお返事したが、元気よくおててを上げた。あと翼がうるさい。でも周りにいる職員たちはとてもとても優しい顔で見守っている。かわいいは正義だ。

 ノースの言う「笛」とは、高周波数の音が出る特殊な笛である。今回の参加者の内、コウモリ獣人ながら冬眠性の獣性の弱い職員、ニコラス・ニコロスのみが聞くことが可能なもので、それぞれに振り分けられた吹き方で、誰が・どこで吹いているか判別できる。


「じゃあコルジくん、行こう! 今は身体が小さいから、危ないことはしちゃダメだよ!」

「うむ!」


 コルジと今回コンビを組むサコンは、身をかがめて視線をコルジに合わせながら言い聞かせる。ついでに、女性職員たちのイチオシで装着することになった蝶リボンとサスペンダーの歪みを、それぞれ上の両手と下の両手で直してあげておく。サコンたち相棒役も制服ではなく、私服だ。サコンは不思議な服を着ている。剣術の道場などでは着られている「道着」というものだそうだ。この辺りには道場もあるので、袋に包んだ刀を持ち運んでも怪しまれず、都合がよかったらしい。


「僕は大体こっち側の建物の間とか木の上にいるからね、万が一危なくなったら、すぐ来るんだよ!」

「わかった! 頼りにしているぞ!」


 元気よくコルジは人気(ひとけ)のない裏通りへ繰り出すのであった。


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