(2)
HoHoHo……
今日もクリスマス……
ところで学校についての設定をこっそりと教えて!ダンバー☆ダインに追加しましたが、
要するに
「初等科→小学校、中等科→中学校、高等科→高校」
って読んでくれっていうお話なんだね。
数日後。コルジは五課の一室に呼ばれていた。他の囮役と思われる小柄な職員たちや、五課と八課の職員も居る。今日は打ち合わせと潜入用の衣装の用意などである。
「こんにちは! 一課十二班のコルジエルです!」
「あ、コルジくん! こっちこっち!」
今日も黒光りが美しい、カブトムシの蟲人サコン・ササハラが四本の手の内一本を振る。彼は囮作戦が上手く行った際、現場に突入する側だ。
「サコン! 今日もかっこいいな! 角が特に!」
「ありがとう!」
サコンは普段初等科のこどもたちにするように、コルジと手を繋いで席へ誘導する。
「僕が君のパートナーになったよ。がんばろう!」
「うむ!」
「まだ説明開始まではちょっとあるね。で、コルジくん、囮役ってことだけど……衣装はどうする?」
「うむ、私服だと服も身体に合わせて小さくなるんだが……家で試してみたら、制服はぶかぶかになってしまった。鳥人用のこども服を借りようと思う!」
「……うん! サイズを合わせようか!」
不思議なツッコミどころがあるが、気にしないのが心身の衛生上よろしいということを知っている男である。さすがサコンである。
ちなみに家で久々に小さくなった際、何かを察知した執事が文字通り飛んできたが、主人の愛らしさのあまり腰と膝と眼鏡が砕けた。
「わかった! じゃあ……」
「あ、待って待って! 隣の部屋に衣装とか置いてあるから、そっちで!」
「うむ!」
ここで小さくなるつもりなのを察して、サコンはまた手を繋いで誘導する。ちょっと超常現象を他の多くの職員たちの前で起こすのは危ない気がしたし、制服がぶかぶかになっちゃうらしいのでその意味でも危ない。さすがサコンである。
隣の部屋に行くと、八課のガイ・ガードナーがパートナーになるらしい小柄な獣人職員といっしょに衣装を選んでいた。
「あれ? コルジじゃん。どうしたー?」
「あ……」
いっしょにいた職員は、ロルル・ロアクロア。ラーテルの獣人で、密かに色んな意味でコルジにライバル心のようなものを抱いている。一方的に。乙女心は複雑なのだ。
「あ、ガイ先輩こんにちは! 俺、今回参加するんです!」
「え、そうなの? 突入で呼ばれるの珍しくない? まあ、俺も速さと高さが必要なときのために呼ばれたんだけど……」
「あ、ガイ先輩! コルジくんは今回、囮役なんです!」
「……え?」
「え?」
ガイとロルルが疑問の表情を浮かべる。
「そうなんです! 今回、囮になります! 衣装を選びに来ました!」
「え、えと、コルジ。……小さくなれたりとか……する?」
さすがのガイである。正解を引き当てた。
「はい! 小さくなると言うか、本来の……あ、ないしょです!」
「あー、うん、はいはい、いいんだよ隠さなくて」
とりあえず頭をぽふぽふと撫でて、ガイはもう受け入れた。さすがガイ。
「それに折角だから、ちっちゃいコルジ見てみたいな~?」
「わかりました! じゃあ戻りますね!」
コルジが元気よくお返事をした瞬間、光に包まれ……
「ぶかぶかだ!」
かわいらしい声と、かわいらしいおててが公安の制服から飛び出している。というか、冬用のケープのような上着を着ていたのだが、それに絡まってもぞもぞしている。……全体的な大きさが、ロルルより小さい。
「!! ホントにちっちゃくなったー!!」
「えええ!?」
サコンとロルルは驚いた。ガイも驚いているが、
「と、とりあえずコルジ? 両手を上にわーいってして」
「わーい!」
「っ、声かわい……っ! んんっ! とにかく、脱がすよー」
「はい!」
上から上手に服を引き抜いてやると、ホルターネックの制服がワンピースのような状態になった幼児がそこにいた。
それはもうそれはそれはもう、この世のものとは思えないほどかわいらしいと称される(※某執事に)、幼児が。
「!!!!!!」
三人は固まっている。コルジはホルターネック以外の衣服がすべて床に落ちてしまったので、少しスースーしている。
「こ……」
ガイの口からやっと言葉が。
「このコは俺が守る!!!!!!」
あまり出さないほうがよかった言葉が。
宣言と同時に膝立ちになってコルジ(幼)を胸にかき抱いている。
「先輩!? いや分かりますけど!?」
「負けた……!!」
サコンはまだギリギリ踏みとどまった。ロルルは完全敗北を悟った。ついでに今から初等科のこどもぶって捜査するのがとても恥ずかしくなった。なんという辱め。
「こんな幼気なコを危険な任務に出すなんて絶対にダメだ……!」
「ガイ先輩! 俺は公安しょくいんですよ!」
身体の問題なのか、若干舌っ足らずに聞こえる。もうダメだ。ガイの父性とか庇護欲とかなんか色々ダメだ。
「こどもを危険な目に遭わせるわけには……!」
だが言ってることは至極真っ当である。ただ、これがあのコルジであることが少し意識の外に飛んでいる。
「こどもが危険な目に遭っているからこそ、俺はやるんです!」
「!! えらい……えらすぎる……後でお菓子買ってあげるね……!」
「やったー!」
なんかもうダメだが、一応納得はしてくれたようだ。その間にサコンは今のコルジに合うサイズの服を見繕っている。ロルルは項垂れている。
「えーとこれが新一年生用……あれ? コルジくん、もしかしてこれよりもちょっと小さい……?」
「!! お……俺はそれくらいおにいさんだと思っているが……!?」
「お兄さんじゃなかったね……」
サコンはそっと別のこども服を手に取った。ちょっとよそ行きで上品な、初等科入学前くらいの幼児用だ。
「これにしよっか! うん、ぴったり!」
「うむぅ……!」
思ったよりおにいさんじゃなくて、ちょっと悔しいコルジである。
とりあえずサコンがガイの腕からコルジを回収して、着替えさせた。大変かわいらしいおこさまの出来上がりである。
「うむ、これにしよう!」
「そうだね!」
「すごく似合ってる!」
「ぐぬぬ……!」
三者三様の反応である。
「あ、そろそろ時間ですね! 行きましょう!」
「よぉし、おいで!」
「はい!」
片膝で自然に両手を広げて呼ぶガイと、自然にそこに飛び込んで抱っこされるコルジ(幼)。あの執事が見たら血の涙を流すだろう。ふたりは嬉々として隣室に向かった。
「……あ! 着替えなくていいの!? ていうかそのままでいいの!?」
サコンがコルジの元々の服を抱えて急いで追いかけたが、隣の部屋は既に多くの悲鳴が上がっていた。
☆
「このコは私が守るわぁ……っ!!!!」
大騒ぎになった説明や打ち合わせの後、そのままガイに抱っこされてコルジが一課十二班に戻ると、デルタも残念なことになった。もともと慈愛と母性あふれる彼女に、コルジ(幼)はあまりにかわいすぎた。ガイに手渡されたコルジ(幼)をぎゅっと胸に抱きしめて宣言している。
「えー!? かわいいねー!? えぇー!? チョコ食べる?」
クラウデンも、いつも以上の甘やかしモードに入った。
「え、マジでガ……ちびっこじゃないっすか。うわー。だよなぁ」
サンリは妙に納得している。かわいいとは思っているがその前にコルジだと思っている。所詮コルジだと。あと弟の小さい頃のかわいさが、自分の記憶の中では世界一なのだ。お兄ちゃんなので。
「うむ、残念だが、思ったよりおにいさんじゃなかったようだ!」
デルタに頬ずりされてクラウデンとガイによしよしされながら、コルジはサンリに返事をする。もみくちゃだ。
「マジっすかー……ご両親に頼まれたときにそうじゃないかなーとは思ってたんすけど。まあ、いっか。で、作戦はいつです?」
「三日後だ! 目ぼしい所をひとりでうろうろする!」
「ダメよっ! 危ないわ!」
「デルタくん、落ち着いて? 仕事だよ? ちょっと僕も見守りに参加しようと思うけど」
「そうですね……私、狙撃銃持って参加するわぁ……!」
「ふたりとも大丈夫すか。なんか、色々」
なんか色々既に大丈夫ではないが、仕方ないのである。
しばらく来客用のソファで、コルジをデルタと交代でお膝にのせてにこにこしていたガイは満足した顔で八課に帰っていった。心なしか肌も翼もつやつやふかふかしていた。
「でもこんなナリで任務とか、先輩んとこのご家族とか執事のローゼルさんとか、気が気じゃないんじゃないですか?」
サンリは、あの見目麗しい一家と、見目はいいが様子のおかしい執事を思い浮かべる。結構過保護なはずだ。特に執事。
「任務内容のことは、しゅひぎむがあるからな! みんなには話していない」
「っすよね。よかった、あんたのことだからうっかり言ってるんじゃないかと」
「ははは! 大丈夫だ!」
「えらすぎるわぁ……」
「デルタ先輩、戻ってきてください……!」
しかしデルタは定時いっぱいでコルジが青年の姿に戻る……というか化けるまで、戻ってくることはなかったのだった。
年末年始は忙しすぎるので、更新がまた遅くなりそうです。




