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幕間 快気祝いとお礼の会~おめでとうありがとうパーティー!~ (1)

「えー……ありがとう。乾杯」


 開会の挨拶をたったそれだけで終え、アレックス・アラガミはジョッキを掲げた。


「乾杯!!」


 シャイな狼獣人の、そんな様子に慣れきっている面々は、笑顔で同じくジョッキを掲げた。そもそも、お礼も詫びも既に散々聞いている。


「アレックスさんが完全回復して、本当に良かったですよ〜!!」


 寮生たちが口々にしているそんな言葉も、やっぱりまだまだ出てくる。


「心配と迷惑をかけた」

「気にしないでください。ていうか、普段から無理しないでくださいよ。俺、ちょっとお手伝いしただけで、普段おふたりがすごく大変なんだなぁって実感しました」


 サンリの発言に、寮生の面々が実感を込めて頷く。しかしアレックスはアニーと顔を見合わせて、微笑んだ。


「……好きでやっている部分もあるから、大変ではない」

「そうよー? 大きなこどもたちがいっぱい食べて元気に過ごしてくれれば、それで十分しあわせなのよー?」


 眩しい。美男美女の慈愛溢れる笑顔が眩しい。


「ボクたちもこどもー!」

「ねー!」

「んー!」


 そんなふたりに、彼らの実子たちが飛びついた。七歳の男の子の双子と、五歳の女の子だ。

 眩しい。美しく愛らしいしあわせ家族がまぶしい。寮生たちは独身だから余計に眩しい。

 ちなみに、こどもたちはちょくちょく渡り廊下を通って家から寮のほうにやってくるし、休日は寮のお兄ちゃんたちに遊んでもらっているので、寮生たちとも仲良しだ。


「わぁ! こんばんは! コルジエルだ!」


 この場で唯一彼らに初めて会うのが、コルジである。こどもたちを見てテンションが上がったのか、翼がばさぁっ、と広がった。


「はい先輩、大人しくこどもたちと遊んできなさい」

「うむ! いっしょに遊ぼう!」

「いいよー!」


 四人は食堂の隅に移動していった。手にはそれぞれジュースと料理を持っている。仲良く自己紹介しながらはしゃぐ彼らを、アニーとアレックスは優しく見守っている。


「コルジくんには、本当に感謝しなくちゃねー」

「ああ。大恩人、だな」

「まあ、でもそこまで畏まらないほうが、先輩も喜ぶと思いますよ。本人、お祈りしたっていう認識しかないし、ありがたがられるより褒められるほうが喜びますね。ガキなんで」


 サンリは公安におけるコルジ取扱第一人者である。


「サンリくん、コルジくんには厳しいよね……? まあ、ちょっと気持ちはわかるけど……本当にいいコだよ?」


 新人研修時代にお世話係だったサコン・ササハラがフォローする。気持ちはわかる。ちょっとではなくとってもわかる。でもサコンはサンリよりかなり気の持ちようが大人で優しいので、コルジのことを微笑ましく思っている。


「いいやつなのはそうなんすけど、迷惑なやつでもあります」

「あー……うん! とりあえず、飲もう!」


 サコンは色々察して自分のジョッキをサンリのそれにぶつけた。フォローしきれないこともある。


 大人たちがやんやと飲み食いしている横で、こどもたちはアラガミ家のこどもたちが持ってきたおもちゃと山盛りの料理を前に、きゃっきゃとはしゃいでいる。


「チューリップみたいなからあげ! フライドチキン! どっちもおいしい!」

「ホネをしゃぶるのもおいしいよー」

「おさかな! おにいちゃん、おさかなもたべるー!」

「うん、ほらどうぞ。ホネに気をつけてー」


 男の子ふたりは、父親に似て耳やしっぽが狼のものだ。兄はアルベルト、弟はアンドラ。女の子はアンジュちゃん。母親のように、猫の耳としっぽである。ただ、三人とも口調はどことなく母親に似てのんびりだ。


「野菜も食べよう!」


 コルジはおにいさんぶっているが、今夢中になっているのはフライドポテトだ。野菜の範疇に入れていいのか栄養学的には微妙だが、食べてみておいしさにびっくりしたらしい。家では滅多に出ないものだ。


「ポテト、すきー!」

「うむ! 取ってあげよう!」


 アンジュのお皿にかいがいしくポテトをよそってあげるコルジなのだ。加減がわからなくて山盛りになったが。


「コルジは公安のひとだよね? 寮には住まないの?」

「住んでほしい!」

「ね!」

「ははは! ありがとう! でも俺の家は飛んで二十分くらいだから、近いんだ!」

「飛ぶの、すきー!」


 飛行可能種の寮生たちに抱っこしてもらって、よく飛んでもらっているアンジュは、両手を広げてコルジに飛びついた。チキンとポテトで油べっとりのおててなのだが、本人もコルジもお兄ちゃんたちもまったく気にしない。というか、気づいていない。


「お! じゃあちょっと飛ぶか!」

「ボクも!」

「ずるいー! ボクもー!」


 コルジはあっという間に油まみれのこどもまみれになった。両腕にそれぞれアルベルトとアンジュ、肩車でアンドラをくっつけている。


「アニーさん、アレックスさん、ちょっと外を飛んできていいでしょうか!」


 ちゃんとご両親にお伺いを立てるのである。おにいさんなので!


「うんー! 暗いから気を付けてねー!」

「寒いから、何か着ていったほうがいい」

「先輩! ちゃんと! ちゃんとしてくださいね!?」


 ご両親と後輩からお許しが出たので、コルジはこどもたちの道案内で管理人宅のほうへきゃっきゃと向かった。ちゃんと上着を着てから中庭に出て行くようだ。


「……今回、初めて接したわけだが。コルジエルくんは、無邪気だな」

「アホとも言います」

「も~、サンリくんったら! かわいくていいコじゃない」


 神妙なアレックスと辛辣なサンリと親切なアニーである。


「図体のデカいこどもなんすよ……」

「なるほど、そう、だな。エンジェリアは見た目ではよくわからないな」

「あー、なんか、外見の年齢も変えられるって話でした」


 サンリは、本人曰く「うんと若作り」しているコルジのおじばあ様を思い出す。見た目を変えられる獣人や魚人はいろいろいるが、あの外見年齢の操作は反則だと思う。


「やっぱり? うちのコたちとそんなに変わらない感じするものねー」


 だが、アニーの目は誤魔化せなかった。


「ご両親はさぞ心配だろうな……」


 親の視点と、かつて公安一課の捜査員として大怪我の経験のある先輩の視点を合わせて、アレックスはコルジの両親を慮る。


「まあ、その分うちの班長とかも保護者みたいなもんですし、竜種のみなさんもかわいがってるんで、大丈夫でしょう」


 周りからはすでに一番の保護者認定されているのが自分だと知らないサンリは、能天気なものだ。アレックスもアニーも、あえて何も言わずにサンリを暖かく見守るのであった。


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