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幕間 デルタ嬢のとある一日(1)

ところで個人的に

獣人は「じゅうじん」、鳥人は「ちょうじん」、蟲人は「むしびと」って読んでますがお好きに読んでもらって構いません。

 デルタ・デラ・デラウェアの朝は早い。


 いや実際はそんなに早くはない。あくまで本人はすごく早起きと思っているのだが、午前六時に起きて、ベッドの上で軽くストレッチをして、顔を洗ったら朝食の準備をする。今日はトーストだ。焼いている間にベランダの植物に水を遣る。


 トーストにたっぷりのバターを塗って、ちょっぴりジャムも塗って、紅茶を淹れる。こっちにジャムをたっぷり入れる。デザート要らず。


 のんびり朝のニュースと天気予報をチェックすると、ささっと身だしなみを整える。意外とあまり時間はかけない。山羊の獣人にしては珍しいふわふわのくせ毛が、逆にそのままでお洒落。少しだけ整えて、小さな角がちょっとだけ見えるようにするのがポイントだ。アイラインは目尻に少し、アイシャドウは薄めに。チャームポイントの横に長い瞳孔を際立たせるメイクを研究中だ。口紅は今日はローズ系の気分。


 服は制服でよい。今日はワンポイントでスカーフを巻いていくことにした。シャドウに併せて薄紫にする。


 鏡でチェックすると、いざ出勤。それが午前七時三十分。


 職場までは徒歩十分。既に出勤しているしっかり者の後輩のサンリに挨拶をして、情報端末を立ち上げ、たまにお花などを活けて、紅茶を淹れる。お気に入りの茶葉を職場に置いている。しかも数種類。気分によって飲み分けるのである。抜かりはない。


 しばらくすると、元気よく、しっかりしてないほうの後輩のコルジが飛び込んでくる。彼女は彼のことを、とても微笑ましく思っている。初めて会った瞬間は、神聖種であるという前情報と、嘘みたいな美しさに緊張したのだが、口を開いた途端「あ、このコは私たちがちゃんとお世話しなきゃ」と思った。多分クラウデンもそう思っている、と彼女は推測する。サンリも(認めないだろうが、少なくとも無意識では)そう思っているだろう。


 始業時間ぴったりかやや前に、クラウデンがやってくる。朝礼代わりのお喋りが終われば、いざ、仕事だ。


 彼女は普段、クラウデンの手伝いばかりしていると思われがちだが、実は違う。古巣の一課第二班からの依頼で、資料の精査・分析・推理まで行う。十二班にきてからは、かなり仕事を減らしてもらっているのだが、それでもこの班で一番働いているのは彼女であろう。現場検証に出かけることも、結構多いのだ。

 ちなみに、現場検証に行くとバレるとついて来たがるコがいるため、その際は他のふたりが必死に注意を逸らす。それはあのふたりの大事なお仕事だ。


 お昼は零室のレイコや他の班の同期たちと昼食を摂り、午後のコルジのお昼寝タイムの間にその日やると決めた分の仕事を片付け、コルジがおめざめすれば班員と一緒にティーブレイクを挟み、その後はのんびり書類整理をすることにしている。忙しいときに書類を手にしていると、なぜか食べてしまうことがあるので、一区切りついてから触るのだ。余談だが、周りも彼女にはなるべくデータで渡すようにしている。

 

 元気な後輩たちを見送って、クラウデンに戸締りを任せた終業後は、家で着替えてからときどき友人とディナーに行く。

 今日は別の業種の友人と、お洒落なレストラン。通りに面した大きなガラス窓から、夕暮れの中道行く人々を眺められる席で、乾杯。


 キリギリスの蟲人である友人は、一口飲むとそのかわいらしい複眼をきらきらさせて身を乗り出した。



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