第十五話 ☆後の段~男子大生(含む)湯煙温泉事件~(1)
彼らが知り合いで仲もよいので(サギリとガイは初対面だが、ガイのコミュニケーション能力を甘く見てはいけない)、サラはまとめて宿の案内をすることにした。
「ここが当宿自慢の温泉です!」
「おぉ~!」
部屋数のわりに大き目の、立派な露天風呂だ。眺めも良いが、風呂場自体も大きな岩と大きな樹が調和していて、風情がある。
「朝の六時から夜の十二時まで、ご自由にどうぞ!」
「やったー! いっぱい入ります!」
いちいち大喜びのコルジに、サラもにっこにこである。
「夕食は何時がいいかしら? ガードナーさんは六時でしたよね?」
「あ、じゃあこいつらと合わせてもらってもいいですか?」
「うれしい! いっしょですね!」
「ねー」
コルジの頭をぽふぽふと撫でてやるガイもにっこにこである。
「あ、じゃあサラおばさん、俺らも六時で大丈夫?」
「勿論よ! むしろ助かるわ!」
「じゃあごはんの前に、お風呂に入ろう! ふたりも寒かったろうし、先輩も長旅でお疲れでしょう?」
ちなみに、ここまではコルジが秘密兵器こと駕籠にふたりを乗せてきた。陸路で行けなくもないのだが、空路が圧倒的に便利なためである。
「そうだねー。温泉、楽しみにしてたんだ」
「はい! 俺もです!」
「僕も。成長とともに、温泉の良さに気付きますよね……」
「サギリくん、わかってるね~」
「ガイ先輩! 俺、ちゃんと百数えますから!」
「ん、えらいえらい!」
サンリの後ろで、みんなで入浴することが決まっていた。
あとは宿の他の設備や外出時の鍵の扱いなどを聞いて、いざ、温泉である。
「わー!」
「こら先輩! ちゃんと身体と頭洗ってから!」
「うむ!」
「コルジ、翼洗ってあげよっか?」
「ありがとうございます! 先輩も! 洗いっこ!」
「ありがとね~。……おぉ~、いい撥水! 綺麗に手入れしてるじゃーん」
「えへへ!」
サンリたちには有翼種のことはよくわからないが、ふたりが楽しそうでなによりである。あと翼を洗っている有翼種のそばにいると、急な羽ばたきでびしょ濡れになることは学んだ。コルジのせいで。
「はぁ~……それにしてもいい湯だなぁ……」
「そうだねぇ……」
双子が蕩けそうになっていると、上空を行く何かが見えた。竜だろうか。昔ならもっと疑問を持ったのだろうが、空を飛ぶ竜を見慣れたサンリたちには、特に違和感はない。竜だってそりゃ飛ぶだろ、そりゃ竜だもん、と蕩けた頭でぼんやり考える。
「……ねえお兄ちゃん。後で街のほうを歩いてみよう。噂のこと、少しでもわかるかも」
「おぅ、そうだな」
ただ、蕩けていてもサギリは優秀だった。
「お、なになに? 街? ナンパ?」
そこへ、翼の洗いっこが終わったガイとコルジが入ってきた。翼からいいにおいがする。
「違いますよ……なんかここの宿、今困った噂を流されてるらしくて」
「へぇ……? ああ、だからこの時期でも予約が取れたのかな」
「ちょっと街で聞き込みしてみようかと思いまして。まあ、俺たちだとアレですけど、コルジ先輩なら怪しまれないかな。まあ、不安しかないけど」
「聞き込み捜査だな!」
「お、じゃあ俺とコルジがやるよ。コルジ、聞き込みしたことある?」
「ないです!」
「だと思った! 俺が指導してあげるからねー。これでも拠点捜査の一環で、よくやってるんだから」
「はい! ご指導お願いします!」
「お返事は最高! じゃあ後でがんばろうね」
でもとりあえずはこの温泉の質のよさよ。
双子がのぼせる寸前まで、四人で蕩けていたのであった。




