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それ以来、コーネリエルとダーケンはよく会って遊ぶようになった。ダーケンは好奇心の塊のような男で、コーネリエルをあちこちに連れまわす。コーネリエルも好奇心は旺盛なので、世界をいっしょに見て回るのが楽しくてしょうがなかった。雲の上に引きこもる伝統的なエンジェリアの生活は、彼には窮屈だったのだ。
まあ、ダーケンの好奇心が過ぎることで、あれこれ大変な事態に遭遇したり振り回されたりすることもあるのだが、幸いにしてコーネリエルは心が広く、また、アクシデントも楽しめる性質だった。
「まだまだ世界の技術水準は低いな。コーネリエル、僕は、魔法の仕組みを解明して、技術に落とし込みたいんだ。僕たちの種族以外でも、気軽に使えるようにしたいんだよ」
ダーケンは時々、自分の夢を語る。難しい話も多かったが、それを聞くのもコーネリエルは好きだった。
「魔法を再現する技術、ってことかい?」
「そう。僕はな、魔法を系統立てて、一種の学問のようにしたんだ。魔法は使い方や工夫によっていろいろできるんだが、みんながみんなそれをできるわけではないし、思いついたりもできない。だから用途別に使い方を教えたり、新たに考え出したりして知識の普及と発展を目指した。それから、種族のみんななら、いわば魔力というべきものを使えば、決まった魔法を簡単に再現できるようにした。これだ」
ダーケンは一枚の羊皮紙を取り出した。複雑な計算式や文様のようなものが描かれている。
「魔法陣、とでも名付けるかな。これに魔力を……いや、君にもできそうだな……ちょっとここに手を置いて、なんかこう、力を送り込むイメージをしてくれ。君がたまにやってくれる『元気になれ』みたいな感じで」
「うん、わかった」
コーネリエルが文様に掌を押し当てて、暖かい気持ちを送るようにしてみると、文様が光った。
「お、やっぱりできた! よし、手を離せ。危ないぞ」
「え!?」
急いで手を離すと、羊皮紙から炎が噴き上がった。
「えー!?」
「はは! エンジェリアだと火力が違うなあ! でもすごいだろ? 『力』を流し込むことで、僕たちの魔法が再現できるんだ」
「う、うん、すごい発明だ!」
「ちなみにこれは、どこでも暖をとったり料理ができるように作った携帯焚火みたいなもんだ。便利だろ? で、こういった風に、誰でも同じ効果を得られるようにするための知識や技術を、『魔術』と呼ぶことにした。なかなか面白い学問だろ?」
「これはすごく興味深いね……やっぱり君は天才だなぁ」
「知ってる」
ダーケンは愉快そうに笑った。
「でもまだまだ。これは僕の種族や、まあ、君のように超常的な力を持ってないと使えないからな。最終目標は、ヒュームにも使える魔法の再現道具を作ることだ」
「ヒュームか。それは難しそうだね」
「うん、まあ、遣り甲斐はある」
ヒュームは一番特徴のない、非力な人種だ。火は火打石などを使用して、一度熾したものを大事に絶やさぬようにして使い続けている。不便な上に火事も多い。その生活を改善できるとあらば、ダーケンはもう人類の指導者のような立場になれるかもしれない。もっとも、本人はあくまで裏で好き勝手やりたいみたいだが。
「とりあえずは火と水で、蒸気を利用する方法を検討中だな。火打石のような装置と燃料、水を組み合わせれば……あと雷には無限の可能性を感じるんだよな……」
ぶつぶつと思考の海に潜っていくダーケンを、コーネリエルはにこにこと見守る。友が天才で誇らしい。
とりあえず、とても便利だったので、先ほどの火の魔法陣と、おすすめされた水を生み出す魔法陣はもらって帰ることにしたのであった。




