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幕間 追憶編 親友たちの輝ける日々(1)

大昔のおはなし。

 今は昔。コーネリエル・コア・コーネリウスのその翼がまだ一対で、その髪がまだ青緑色だった頃。


 ある日の彼は、いつものようにのんびり空の散歩を楽しんでいた。暖かい太陽の光と、冷えた空気が心地よい。いつも上空はあまり人が通らないので、空を独り占めしているようで楽しくもあった。

 だがその日。彼は自分以外のものが、遠くから飛んでくるのに気付いた。


「おや? 初めまして! 君はどこから来たんだい?」


 彼はエンジェリアにしては珍しく、他種族に対しても社交的だ。その場で浮遊して手を振っていると、その人物は近づいてきた。


「ふん? ああ、エンジェリアというやつか。初めて見た」


 緩やかに波打つ金色の髪を後ろで束ねたその人物は、赤い瞳をコーネリエルに向けた。コーネリエルの緑の瞳とは対照的だ。結構無遠慮にじろじろと見てくるが、悪意は感じられない。外見上の年の頃は、コーネリエルと同じくらい……ヒュームでいえば、二十歳になるかならないかというところの、男性だ。

 その背には、蝙蝠のような翼があった。


「私も君みたいな種族は初めて見た! 蝙蝠の獣人じゃなさそうだけど。ああ、その前に、私はコーネリエル・コア・コーネリウス。君は?」

「僕は……」


 青年は芝居がかった所作で、優雅に一礼した。


「ダーケン・ダーカー・ダイン。地上から来た。以後お見知りおきを」


 それがふたりの出会いだった。





「へぇ! じゃあ、その翼で飛んでいる訳ではないんだね」

「ああ。でもこうやってハリボテでも着けておいたほうが、飛んでいる姿を見られても面倒くさくないだろう? まあ、君には一目でバレたけどな」

「そうだね。そういうの、なんとなく分かるんだ」


 ふたりは真下にあった小島に降り立って、おしゃべりに興じていた。どうせふたりとも暇つぶしの散歩の途中だ。


 ダーケンの話によると、そもそも彼らは、特に分類されている種族じゃないらしい。まだまだそういった種族も多いので、特におかしなことではないが、翼を持たずに飛べる種族というのは異常だ。これから分類が進めば、そういう超常的な能力を持つ種族は、エンジェリアと同じように「神聖種」という括りにされるだろう。


「僕たちは自分たちのこの能力を『魔法』と呼んでいる。飛ぶだけじゃない、他にも色々できる」

「ほぉ! 例えば?」

「ほら」


 ダーケンは右の掌の上に燃え盛る火の玉を出して見せた。


「! すごい!」

「それだけじゃないぞ」


 同時に左の掌の上にゆっくりと渦を巻く水球を出す。


「おぉ~!! すごいな、自然現象を操ってみせるのか!」

「まあな。飛んでるのは風の力を使っている。あとは、そう、雷のようなものも出せるな」

「なんでもできるんだな」

「エンジェリアに言われてもなぁ。噂には聞いているんだが、雲の上に住んでいるというのは本当か?」

「うん」

「その……家は?」

「ちゃんと建ってるよ。庭もある」


 コーネリエルが自分の家を説明してあげると、ダーケンは難しい顔でこめかみを抑えた。


「……雲は水や氷の粒であって、そんな風に使用できるものではないはずなんだが……自然現象を無視してみせるのがエンジェリアなんだな」

「そうかな? 生まれてからずっとそうだから、よくわからないな。そうだ、家に来てみるかい? 百聞は一見に如かずだよ」

「それはありがたい! 僕は、知らないことを知るのが大好きなんだ」


 ダーケンは初めて、芝居っ気のない、外見年齢相応の笑顔を見せた。


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