(2)
そして迎えた三連休。コルジの「サギリくんも!」の圧に負けてサンリが弟を誘ってみたら、案外喜んでついてきた。
朝早く集まり、例によってクラウデンのレンタカーで向かう。スキーやスノボの道具もあるので、ちょっと大きめの車だ。コルジのために執事が準備してくれたソリも搭載されている。あとぬいぐるみと絵本も搭載されている。執事。
元気よくおうたを歌うコルジにほっこりする一同(サンリ除く)は、目的地の山の麓で食料品などを買い込むことにした。ダライアウツに「麓にちょっと大きめの店があって、地元の旬の食材とか安く手に入るからおすすめ~」と事前に聞いていたのだ。なるほど、街であまり見かけない種類の野菜や、川魚などが置いてある。
「……あんたたち、何処にいくんだい?」
会計を済ませたとき、店の番をしている猪の獣人の老婆が、訝しげに彼らに問いかけた。
「ああ、そこの山が友人の持ち物でして。別荘があるので、管理がてら泊まりに行くんですよ」
クラウデンがにこやかに答えるが、老婆は益々険しい顔をする。
「やめといたほうがええ。あの山の館には近づかんほうがええ」
「え?」
「昔からあの山は恐ろしいものが出ると言われておる。自分も昔、興味本位で館を見に行ったことがあるが……」
何かを振り払うように頭を振って、
「あの館は呪われておる」
山の麓の老婆はそう言った。
「はい! 浄化してきます!」
コルジはそう答えた。
「よくご存知ですね! おばけさんたちが集まりやすいらしいです!」
「お、おぉ……?」
「がんばってきますね!」
「お、おぉ……」
コルジの勢いに押し切られて、老婆はそれ以上何も言えなかった。
☆
意外と明るく、さほど雪の積もっていない山道を抜けると、山の中腹辺りにその館はあった。
元々それほど高くない山だが、それより上は雪で車が進めなくなるなど、生活するのも大変になるために中腹に建てられたようだ。
それにしても。
「わぁ……見るからに呪われてるね……」
そう。見るからに呪われた館だった。二階建ての、大きめで立派な建物だが、必要以上に雰囲気がある。ちょっと怖気づいたサギリはお兄ちゃんの服の裾を掴んだ。ちょっと嬉しいサンリは頭を撫でてやりながら、安心させるように言う。
「大丈夫、こういうときのためにコルジ先輩がいるから。よし、先輩お願いします!」
「応! いってきます!」
「行ってこい行ってこい」
やる気満々のコルジをやや雑に送り出す。
コルジは鍵を手に館の扉を開けると、足を踏み入れた。玄関先が光に包まれたように見える。
そこからコルジが移動しているであろう順に、外で待つ面々にも清らかな光が見えた。どんどん綺麗になっていっているのが面白くもある。
「すごいね、コルジさん」
「あれはこれが取り柄だから」
「お兄ちゃん、コルジさんに厳しいよね……」
「甘やかさないだけ」
その割には自然に世話を焼いてあげてるよね、とサギリは思うのだが、言うとちょっと嫌な顔をするのは目に見えているので言わないでおく。
みんなで見守っている間に、みるみる館は清らかになっていく。それはなかなか見ごたえのある光景ではあるが、はたと気づいて、みんなで車から荷物を降ろし、玄関まで運んだ。ちょうど運び終えた頃、館を一周し終えたコルジが戻って来る。
「ただいま戻りました! おばけさんたちはみんな浄化しましたよ!」
「えらいよ、コルジくん!」
「がんばったわねぇ」
コルジは褒められて素敵な笑顔だ。翼がばっさばっさしている。霊的な意味でも空気的な意味でも綺麗になった館は、明るく上品な本来の姿を取り戻した。
「っし、先輩、お疲れ様っす。じゃあ部屋に荷物運びましょう」
「うむ!」
「コルジさん、お疲れ様です。あとでお茶を準備しますね」
「うむ!!」
クラウデンとデルタは個室を、他の三人はベッドが四つ置いてある部屋を確保して、館内設備の確認を済ませた。トイレや風呂が各階にあるし、一階のラウンジのような場所に暖炉もあり、快適だ。元々はホテルのような使い途を検討されていたのかもしれない。
サンリが手早く暖炉に火を入れ、ついでに風呂の掃除をしておく。その間にサギリは台所を使えるようにしてお茶を淹れ、更にデルタといっしょに昼食の準備をして、クラウデンはラウンジのソファでコルジに絵本を読んであげている。完璧な作業分担だ。一分の隙もない。




