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(3)

 翌朝、例によって「おはよう! コルジエルだ!」を浴びて、一日が始まる。


 ところで最近、サギリは母に護身術を習い始めた。将来学校に不審者などが現れた場合、自分と生徒を少しでも護れるようにするためだ。こどものころは体が弱かったので稽古ができなかったが、最近は多少丈夫になった。とはいえ、週末に一時間程度である。母の方針で「色々覚えても素人のうちは逆に迷うから、二つ三つの技を確実に使えるようにしたほうがいい」ということで、同じ技を体に覚えこませている最中だ。

 今日は出先なので、ホテルの部屋の中で、母の代わりに兄に教えてもらう。サンリはもう滅茶苦茶に笑顔だ。嬉しくてたまらないようで、しっぽが忙しない。ついでにコルジも教わった。だが正直、翼が大きくてかさばるコルジは、素手での格闘に向いていない。残念である。


「サギリ、結構筋がいいなぁ! 兄ちゃんは嬉しい!! ていうか、いっしょに稽古ができるなんて……兄ちゃんは! 本当に! 嬉しい!!」


 と、張り切りすぎてしまったサンリのせいで、サギリは朝からなけなしの体力を使い切ってしまったのだが、コルジの「元気になぁれ!」で元気になった。これは危険だな、とサギリは薄っすら思う。まあ本人に悪気はないし、サギリも助かったので何も言わないでおく。


 その日は買い物などでのんびり過ごし、夕方には「まだサギリといっしょにいたい!」と帰宅拒否をするサンリをなだめ、同じく「もっといっしょに遊びたい!」というコルジをなだめ、サギリはなんとか帰路に就く。帰りは送っていくというコルジの申し出を断った。そうしないと、兄もついてきそうで、そうなると折角なだめた苦労が無駄になりそうだったためだ。

 なだめる手段の中で、次の約束もした。学校に興味を持ったコルジのために、サギリが授業をしてあげることになったのだ。お互いよい経験になりそうだ。





 そして週明け。サギリは多種民俗学の教授の研究室に呼び出されていた。


「サンくん。先日来ていた彼は……アレだよね?」


 眼鏡の奥の瞳が光って怖い。ヒュームなのに猛獣の獣人より怖い。


「え、ええと……」

「……」


 怖い。


「アレ、です……」


 蚊の鳴くような声で白状した。


「いいなぁ!! 実は僕たち学者も、彼らの調査は表立ってできないんだ! 保護種だから!」


 教授は珍しくあらぶっている。


「無理のない範囲でいいから、話を聞かせてくれないかい?」

「は、はい」


 そうしてサギリは、コルジのやらかした奇跡の諸々や、コルジの家で竜種たちとパーティーしたこと、そもそも竜種たちが街にくるようになった理由、竜種たちの間で流行っている樹液入りの和菓子の話などを語って聞かせ、教授を身悶えさせるのであった。


 なお、この教授がサギリの協力を得て論文を発表したことにより、「種族大全」の神聖種のページが少し増えたのは後の話である。


(END)

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